【特別編】奈良林祥の

セクソロジー講義集

さらなる性の知識の泉へ!
 

挿入の話

 
 ここでは挿入(性器結合)について解説していきたい。
 その前に敢えて繰り返すけれども、前稿の「最高のセックスは愛撫によって決まる」で述べたように、セックスにおける挿入(性器結合)によるオーガズムというのは、お互いの性興奮が最高潮に達するフィナーレであって、セックスそのものを性器結合と解釈してはならないし、そのセックスを愉しむ行為のほとんどは、「愛撫」(ペッティング)にあるということを肝に銘じておかなければならない。セックスという快楽の本義は、あくまでお互いがお互いの肉体を慈しむ「愛撫」なのである。
 このことに関連して、子ども達への性教育が行き届いていないことに憂慮する。とかく、思春期に達した子ども達は、セックスという性的行為に憧れを抱き、その未知なるものに対する関心度がすこぶる高くなる。高くなるのが当たり前であり、成長期のからだの変化生理現象が始まったことに戸惑いを覚えるが、これらがセックスとどう結び付くのか興味を示すのは、しごく当然なことである。
 
 ところが、子ども達の、セックスあるいは性交という言葉が一人歩きした興味本位においては、性交(セックス)=生殖=性器結合などと短絡的に、言葉だけで認識してしまっていたりする点が、とても危うい。すなわちセックスというのは、必ずしも「生殖」のためだけにするものではない(むしろそうではない場合が多い)からである。このことはしっかりと子ども達に教えるべきなのに、日本の現況の公教育では、そもそも性交という言葉をタブーとし、その性的行為についてはいっさい教えず、あくまで「生殖」のための性的接触とだけしか教えてこなかった。
 このことは、たいへん憂慮すべき点であって、人の生涯において健康と幸福のための性生活という大事な位置づけについていっさい教えず、また、セックスについて考えることは、大人になるうえでとても大事なことなのだという教養を持たせず、そこに重いフタをして封じ込めてしまっているから、セックスは性器結合だという誤解だとか、女性の性興奮は男性のペニスの大きさで決まる――といった妄信、その他避妊の仕方の選択肢や性病予防の知識がまるでなく、お互いが成り行きのうちに当てずっぽうでいい加減な方針でセックスをやり始めることが原因であり、精神的にも肉体的にも荒んだ性生活の一歩を踏み出すことになりかねないわけである。
 思春期の子ども達による、一方的な思い込みだらけのセックス観を放し飼いにしていては、健康的で幸福な性生活を送ることなどできやしない。とどのつまり、セックスもしくはあらゆる性的行為への淫らな幻想が、意味もなく性器結合のみに注視されすぎてしまっているのは、甚だ問題だと思う。
 
 ここまでは私の主観的意見を述べたに過ぎない。が、ここは挿入(性器結合)の話を進めなければならない。ともあれ、医学博士・奈良林祥先生の名著『HOW TO SEX 性についての方法』(KKベストセラーズ)では、そうした危うさを踏まえ、セックスという妄想を捨て、よりよい健康と幸福のための性生活に位置づけられたセックスとして再定義し、じっくりとこまかくその内実を解説している点で名著であることを裏付けている。挿入(性器結合)に関しては、あくまでセックスの技巧の一つとしてとらえ、著書の中では「ペニスが腟に入る時」といった話の導入部で関心をそそぎつつ、驚くべきディテールでことこまかに解説されている。その内容を要約して、以下に紹介していく(※ここに掲載した3つの画像は、著書の中のイラストを再構成したものである)。

挿入には個人差がある

 ここに掲げた図「性器の結合」は、いわゆる性交体位の一つの、最もポピュラーな“対面男性上位”(正常位)における性器結合を示した図である。
 女性が仰向けの状態、男性がその上に重なる姿勢でいる状態では、の方向とペニスの方向は、角度にして45度ほど違う。は斜め下方に向いているが、ペニスは床面に平行した状態となる。したがって、ペニスは平行の状態でに近づき、亀頭の部分がに入り込むと、あとはそのまま、斜下前方に進入するかたちとなる。
 こうした状態において、ペニスはかなり無理に斜下前方に向けられるので、常に上方に向かっての反発力がある(勃起しているため)。この“対面男性上位”結合した場合、亀頭腟の前壁を絶えず摩擦することになるので、女性にとっての快い刺激の役割を果たすことになる。
 
 ところが、結合の状態というのは、いつまでもこの姿勢でペニスの中にめり込む、というわけにはいかない。何故なら、腟の入口の位置は、一定したものではなく、女性によっては恥骨からの距離が千差万別違ってくるからだ。腟の入口が恥骨から比較的遠いタイプの女性との結合では、むしろ女性の足を上に上げさせて股関節を大きく曲げるような姿勢をとらせないと、挿入が浅くなってしまい、中途でペニスが抜けてしまう、ということも起こりうる。男性側は、挿入時のペニスの進入具合を感覚的に認知し、腟の状態に応じて臨機応変に体位の微調整をする必要がある。

女性の性器を理解すること

 ペニスの先に眼があるわけではないので、結婚して初めてセックスをする男性が、腟の入口をスマートに探り当てられなかったからといって、くよくよすることはない。結婚したからといってペニスの先が、感覚的にここが小陰唇、ここが処女膜と敏感に感じられるわけがないのだ。
 要は、慣れである。訓練である人間の性行動は決して本能なのではなく、お互いの性反応にしたがっていればセックスはおのずと性器結合にまでいたって完結する…なんていうのは誤解だ。すべて、学習体験の積み重ねでできるもの。童貞なのに、はじめから的確にペニスを挿入できる人なんていやしない。できたとしてもそれは、たまたま偶然だったのだ。習うより慣れろという言葉もあるが、ここはしっかり、まず女性の性器についてよく知っておくべきだろう。
 
 男性は自分の性興奮にかまけて、独りよがりの快楽を得ようと思ってはいけない。パートナーとのコミュニケーションが大事である。男性のペニスは、興奮すれば勃起して硬くなる硬くなったペニスの状態でなければ、腟への挿入はできない。それと同じ意味で、女性の性器も、性興奮がなければ腟の入口閉ざしたままである。したがって、お互いの性興奮を高め合うことができなければ、性器結合はできないのである。 

性器の結合

女性性器の外陰部

性興奮の高まりによって女性の外陰部はどう変化するか?

 

挿入は慌てる事なかれ

 女性の性器(外陰部)は、性興奮が高まるにつれて、大陰唇や小陰唇が左右に開く状態になる。ふだんの時の小陰唇の状態は、腟の入口を守るようにしてぴったりと合わさっている。興奮すると、図(女性性器の外陰部)で示したように、小陰唇の位置が移動して、左右に離れ、腟口が外から触れやすくなる。その時を待ってペニスを持っていけば、ぴったりと腟の入口に当たるようになる。
 もしまだ女性の性興奮が高まらないのに、つまり、小陰唇が閉じたままなのに、強引にペニスの先で左右の小陰唇腟口の方に押し込んだら、女性は痛くてたまらないし、場合によっては性興奮から遠ざかってしまうだろう。むろん、結合どころではない。
 大方、童貞の男性うまく挿入できないと焦った人は、こうしたことが原因である。いずれにしても、小陰唇が性興奮によって左右に開くまで愛撫を続け、その上で挿入といったアプローチをするのがいい。そうした場合でも、男性は人差し指と中指を使って、優しく小陰唇を左右に拡げるようにしてペニスを腟の入口に近づけるようにすれば、初心者はうまくいくだろう。

【講義のポイント】

    • セックスは挿入(性器結合)だけで愉しむべきものではない
    • 女性の性興奮を待って小陰唇が開いてから挿入すること
    • 女性の性器をよく理解し、失敗を怖れずセックスを愉しむこと
〈了〉