【特別編】奈良林祥の

セクソロジー講義集

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妊娠中のセックスについて

 
 奈良林祥『HOW TO SEX 性についての方法』(KKベストセラーズ)では、妊娠中のセックスの是非についても詳しく記されていたので、ここに紹介する。
 それは、こんな奥さんの悩み事から始まっている――。
 “妻が妊娠している時、夫が浮気することが多い”というような女性雑誌の記事を見た奥さんは、不安になった。妊娠3ヵ月の頃、つわりの気味もあって夫の要求を拒んでおり、実家の母にも、妊娠したらお腹の子のためにも性生活は慎むのが当然と言われた。夫の帰りが遅かったりすると、ふと心配になる。お腹が少し大きくなってきたせいか、夫はほとんど私にセックスを求めなくなった。セックスをしない方が赤ちゃんのためと思いつつも、夫の素っ気なさに不安になる。産婦人科の先生は、あまり無理をしないようにすればいいという程度しか言ってくれない。はて、妊娠中産後の性生活はどうしたらよいのでしょうか――。

妊娠中にセックスをしてはいけないのか

 奈良林先生はこのテーマの冒頭で、一般の妊婦さんが妊娠中、どの程度セックスをしているかについて、ある調査報告の数字を示している。それは、「妊娠9ヵ月になっても68%の妊婦がセックスをし、妊娠10ヵ月でも41%の妊婦がセックスを営んでいる」というもの。これに関して先生は、妊娠というのは特殊な状況ではあるけれど、病気ではないので、完全にセックスを慎むという気持ちになる必要はない、と述べている。 
 さらに先生は、こうも述べる。昔は、嫁は子どもを産むだけの評価しかされなかったし、妊娠中に亭主が外で女遊びをしても、世間もさほど咎め立てることはなかった。セックスよりもお腹の子の方が大事という考えだったのだ。ただ今は、妊娠中セックスを一途に抑制する考えはナンセンスであり、もっと楽に考えればよろしい。妻が妊娠したからといって、夫の性欲が消えるわけでもないのだから、したい時にセックスをすればいいのだ――。
 
 ただし、注意すべき点があるという。妊娠中女性の体は、いつも同じではない。妊娠前期、中期、後期の3つの時期に分けて考えると、それぞれの時期によって、ホルモン的背景が違う。先生はそれを詳しく説明している。

妊娠中の3つの時期のホルモンの役割

 妊娠1ヵ月から3ヵ月の妊娠初期は、子宮の中で胎盤が作られる時期であるので、妊娠の基礎として、非常に不安定であるため、あまり激しいセックスが繰り返されると、未完の胎盤が壊れて流産を起こすことになりがちである。ホルモン的にも、卵巣から出される卵胞ホルモン黄体ホルモンの2つのホルモンのうち、卵胞ホルモンの方が黄体ホルモンの分量を上回っていることも、流産を起こしやすい原因となっている。卵胞ホルモンは、そもそも胎児を子宮に出そうと働く傾向を持ったホルモンであり、したがって妊娠初期のセックスは、回数を減らす必要はないが、なるべく穏やかに、例えば体位を頻繁に変えてなどというようなセックスはあまり激しくやらない方がいい。女性を手荒く扱う愛情表現は、控えた方が賢明である。
 
 妊娠4ヵ月から7ヵ月の中期は、妊娠中、医学的には最も安定した時期である。胎盤はすっかり完成しており、少々の刺激では剥がれることもないホルモン的にはこの時期、黄体ホルモンが非常に増えている黄体ホルモンは、胎児を子宮内に止め置くように働く傾向を持つホルモンで、妊娠が280日も続くのは、実はこの黄体ホルモンの働きによるのである。出産の時は、この黄体ホルモンが激減し、胎児を出したがる卵胞ホルモンの分量が増えることにより、分娩が起こると思ってもらうといい。したがって妊娠中期は、ごくふつうにセックスをしてよい時期である。またこの時期の妊婦セックスへの要求は昂進するようである。時期的につわりから解放されたことも要因の一つである。
 しかし、この頃お腹は目立ってきているはずだから、下腹に衝撃を加えることがないような、前戯「最高のセックスは愛撫によって決まる」参照)及び性交の内容を組み立てればいい。この時期の女性の性的反応は、妊娠前よりも良くなるといわれている。
 
 妊娠後期は、お腹もさらに大きくなり、妊婦の動作そのものが敏捷さを欠いてくる。したがって、セックスの内容も、前戯及び性交自体が単純なものになるのは自然である。この時期、妊婦の疲労感があり、腹部の膨隆(膨らんで大きくなること)もあるので、背面横臥位(女性の背後に男性が密着し、性器結合する体位)性交することがいちばん無理がない。

妊娠中、夫婦は何か月まで性交しているか

妊娠中の性交と性反応について

 

 ただし、妊娠後期には、性交中に、胎児を包んでいる卵膜が刺激で破れ、中から羊水が漏れる事故が起こることがある。これは早期破れといい、すぐに産婦人科医に相談すべきである。また、後期の終わりの頃になると、黄体ホルモンが目立って減り始めるので、セックス自体が子宮への強い刺激となり、子宮が収縮し、陣痛が起き、お産の開始につながることもある。したがって、セックスの後、周期的に下腹がぐーっと張ってくるような徴候がおさまらないようであれば、翌日、産婦人科医に相談しなければならない。
 
 初期や中期において、医師から流産や早産の兆候があると注意を受けているような時は、セックスは慎むべきである。また、セックスの後、翌朝などに出血がみられるような時も、念のため、産婦人科医で診察を受けた方がいい。こうした特殊な兆候があった時は、セックスを控えめにするか避けるのが無難だ。しかしそれ以外、とくに目立った徴候がない場合は、妊娠中だからといってことさらセックスを敬遠する必要はない
 
 産後のセックス開始の目安は、血が混じったおりものが消え、医師から子宮の回復が良好と言われたら、そこからセックスをしてよいと考えればいい。順調な場合だと産後3週間からセックスは差し支えない、というようになる。ただし、産後の子宮回復は個人差があるので、専門医の診察を受けて判断すべきである。この際、率直に医師に訊ねて、セックスのゴーサインをもらった方が安心だろう。

【講義のポイント】

    • 妊娠中のセックスは基本的に控える必要はない
    • 妊婦の前期・中期・後期にそれぞれホルモンの働きが変化する
    • 産後のセックスは子宮の回復を待ってから
〈了〉