男に異存はない。包茎の話。

もう一つの週刊プロレス伝説

2017年8月8日

望ましい大人のペニスとは?

 「包茎」にまつわる個人的な瑣末を赤裸々に書いてみる――。私は20歳を少し過ぎる頃まで、大人のペニスがどういう状態であれば望ましいのか、判然としなかった。このことはきわめて重大な意味をもつと思う。当時、小学校や中学校の性教育では、女性の生理については個別指導的なもの(女子生徒のみ生理について特別指導を受ける)はあったが、男性の生理(勃起や射精)やペニスのことを教えてくれる個別指導(授業)は特になかったのだ。
 だから、学生時代は分からないことだらけである。中学3年の時、自分のペニスの先の亀頭部分が、成長の影響で少し見えてきていたので、“何気なく”関心を抱いて包皮を剥いた。本当に、“何気なく”の行為であった。それから以後、自分で包皮を引っ張れば、いつでも亀頭は露出するようにはなった。もちろん普段、ペニスがだらりと下がった状態では、包皮が被っていることが多かった。
 
 これはいずれ、後稿で詳しく書くことになるが、ペニスの状態というのは、自分で包皮を剥くことが出来れば、普段亀頭が被っていようが露出していようがどちらでもよく、大切なのは性器を「清潔に保っていること」なのであって、不潔な手でオナニー(自慰)をすることは絶対にしてはならないのだ。無論、不衛生な物を使ったり不潔な場所であってもだ。包皮については、よほど剥こうとすると痛かったり、あるいは包皮が狭すぎて剥けないという場合は専門医に診てもらう必要があるが、それ以外はほとんど、「包茎」の手術する必要はないのである。
 そうした具体的で的確な指導を学生時代に受けてこなかったから、単純に「包茎」は悪であり矯正しなければならないと勝手に思い込むようになる。週刊プロレスや雑誌『宝島』で見たように、あの手の広告で「包茎=矯正手術が必要」という観念が植え付けられ、多くの若者が余計な不安と悩みを抱えるようになる。冒頭で述べたが、現に私は、20歳を過ぎる頃まで、大人のペニスがどういう状態であれば望ましいのか、判然としなかったから、そうした広告によって不安に駆られ続けていたのは事実である。
 

尻隠して頭隠さず

 ――2月というのだから季節は冬だ。それは寒々とした雪山の風景。場所は長野県下高井郡のある秘湯。横湯川に面した地獄谷温泉。
 ある人気プロレスラーが左足を骨折。しかも靱帯損傷で長期入院。その後すっかり怪我が治り、快復したその人気レスラーは、雑誌編集部の“全快祝い”の計らいを兼ねてかどうかは知らぬが、インタビュー取材を受けるという形で秘湯の地獄谷に赴いた。復帰への思いを綴ったカラー記事4ページ。
 それはベースボール・マガジン社『週刊プロレス』No.479、1992年2月18日号の記事であった。人気レスラーの名前は伏せておくことにする。プロレス・ファンなら、たとえ黒塗りで目の部分を隠しても、あの体躯でそれが誰か、すぐにばれてしまうが、黒塗りにしておく必然を、私は感じた。それは“驚くべき”写真であったからである。
 
 校正の業務でどういう手落ちがあったのか(あるいはどういう判断があったのか)理解に苦しむのだけれど、思わぬ写真が掲載されてしまっていたのだ。その秘湯の旅の記事の冒頭で――。
 曰く付きの写真。週刊プロレス史における伝説の写真。それは、記事の初めのページの、人気レスラーが雪山を背景にして「温泉に浸かってご満悦な写真」である。レスラーらしく全裸で腕を組み、手拭いが太股にかけられている。手拭いで下半身の部分を隠しているのは分かる。だがよく見ると、完全に見えてしまっているのだ。手拭いで隠しているはずの、陰部の形が――。
 頭隠して尻隠さずの真逆。「尻隠して頭隠さず」の奥義とはこのことだ。トンチが効いている。これが他のレスラーだったならば、絶対に掲載不可だったとも思われる。何故その人気レスラーだったら、掲載スルーなのかは不明。ここではその部分を黒塗りにして人気レスラーの威厳失墜を防ぐことに私は加勢するが、明らかにペニス(包皮の剥けた亀頭)が見えてしまっていたのだ。こういう雑誌で、見せるべきものではない(ペニス自体が情けないものという意味では断じてない)のは確かである。
 
 しかし私はそうしたものを当時20歳そこそこで露骨にはっきりと見てしまった以上、大人のペニスとはこういうものなのだということを理解した。とは言え、この写真の思わぬ掲載によって、若者読者のある種の反響が、よりいっそう複雑な不安を煽り、「包茎=矯正手術が必要」という観念を助長もしくは深く植え付けてしまったかのような可能性は、否定できない。その人気レスラーのせいではまったくないにもかかわらず。

〈了〉

『週刊プロレス』No.479、1992年2月18日号

これが問題の温泉全裸写真。手拭いの下の陰部が完全に見えていた

温泉の旅でご満悦な某人気レスラー

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