男に異存はない。包茎の話。

緑本と子宮頸がん検診を受けた慶應ボーイに包茎の話を訊いたの巻

2017年10月12日

慶応ボーイは「そば食い」で困った

 前回の稿「慶應ボーイが子宮頸がん検診を受けたの話」は、男子における「包茎」に関しての無知・無関心とよく似たトピックであり、若い女性の子宮頸がん検診についての関心度が、日本は非常に低いという話であった。では…ということで、いっそのこと一足飛びに、その慶應ボーイの彼=慶應義塾大学総合政策学部2年の和田吉平さんに、SNSを通じて自身の「包茎」にまつわる話を訊いてみた。彼は今回、快く引き受けてくれた。
 
――初めて包皮を剥いたのは何歳の頃?
 覚えてなかったですが、多分中学生の頃かなぁと!ガキだったのであんまり意識してなかったですね^^;
――初めて包皮を剥いた時、どんな気持ちだった?
 同様にガキだったのでなんも思わなかったと思いますが、おぉー剥けた!って感じだと思いますw
――「包茎」に関する思い出とか、エピソードとか、ありますか?
 中学生の修学旅行とか、林間学校は恥ずかしかったですね。剥けてるのはまだ珍しい方?でもあったと思うので。あと、一つすごく困ってたのはそば食いが滅茶痛くて困ってました。まぁ、皆同じだと思いますがw

(慶應義塾大学総合政策学部2年・和田吉平談)

 
 「そば食い」というのは私にとって懐かしい響きであった。「そば食い」とはすなわち、陰茎の亀頭と包皮の間に陰毛が入り込み、引っ張られて痛くなることを指す隠語。これは私の経験談であるが、思春期の頃、包皮を剥いてもしばらくすると戻ってしまう。その包皮が戻る際に、陰毛が巻き込まれるのだ。敏感な頃の亀頭はそれだけでも痛いし、陰毛が突っ張った状態になるので、痛くて藻掻き苦しむのである。

 調べてみてびっくりした。この「そば食い」を、「ヌボリリム現象」(Nabelilym Phenomenon)というのだそうだ。女性の同じ様な現象を「メバリウム現象」というらしい。これらがごく最近、研究者Muyo Chanel氏によって命名されたという――というところまで書いてみたのだけれど、おや?この「ヌボリリム現象」「メバリウム現象」? これ、フェイクだろう。Nabelilym Phenomenonなんていう学名を検索しても、公の学術サイトからまったくヒットしないぞ。Muyo Chanelの氏名すら出てこない。うーん。
 面白い。実に面白い。この件のフェイクかどうかの結論に関しては、ここでは保留ということにしておき、いろいろな意味で「そば食い」の話は面白いと思うので、後日、別稿で特集してみたい。
 

“赤本”と“緑本”のこと

 さてさて。
 そう言えばそう言えば――。「包茎」その他性教育関連の資料を何十冊も掻き集めたこの頃、そのことにまったく気づかなかったのだけれど、そう言えば、家にはずっと以前から、“家庭の医学”というような分厚い一般向けの医療本が書棚に鎮座していたなと、今頃になって思い出した。
 
 そう、昔、幼少の頃。家に置いてあったのは、“赤本”と呼ばれる保健同人社の『家庭の医学 新赤本』という本であった。調べてみるとこれは、遠い昔の昭和44年初版で、48年に改訂版が出ている。私が生まれた昭和47年以降、書棚に置かれていたその本を、まだ幼かった手で開いたのを憶えているから、おそらく当時家に置いてあったのは、改訂版ということになるかも知れない。その本の中にはちょっと刺戟的な、というかグロテスクな、手術時の写真だとか脱肛の写真などがあって、幼い私はそれに度肝を抜かれ、興味を持ったのだろう。けっこうな頻度で本を開いていたので、私にとってそれは言わば、ちょっとしたお気に入りの本であったのだ。
 結局、その本が長く何十年も家に鎮座した挙げ句、平成12年(2000年)頃だったか、既にボロボロに成り果てていた“赤本”を見、さすがにこれはもう古いだろうということで処分し、その時新しい医療本を買った。それが、“緑本”の小学館『ホーム・メディカ 家庭医学館』である。
 一言で言って『家庭医学館』は医療に関してたいへん便利な本だ。今となっては当たり前になっている、この手の本の引き方は、病名を索引から検索して開くのではなく、症状から病名に行き着くのである。
 と同時に、思ったのは、自分がもし思春期の頃に、先の“赤本”を開いていたとしたら、どれだけ知識が伴って手助けになっていただろう、ということ。学校ではほとんど性器について教えてくれなかったけれど、家にある“赤本”をちゃんと読めばよかったのだ、ということに、当時はまったく思い馳せることができなかった。無念というべきか。
 今、手元にある“緑本”の『家庭医学館』には、もちろんのことであるが、「包茎」についての記述がある。そこから「包茎の問題点」「亀頭包皮炎の原因」を以下、引用させていただく。
 

「包茎の問題点」
《包茎の男はもてない、恥ずかしいなどといわれていますが、それは誤った俗説です。真性包茎の場合は、陰茎の正常な発育を妨げないよう手術を行ないます。しかし、仮性包茎で、性交に支障がなければ、とくに劣等感を抱く必要はありません。
 包茎が問題となるのは、見た目や俗説ではなく、恥垢がたまりやすいため、それが刺激となって炎症をおこしやすく、亀頭包皮炎や陰茎がんなどの病気になることがあるからなのです。また、本人ばかりでなく、配偶者の子宮がんは男性が包茎の場合が多いとされ、これにも恥垢が関係していると考えられます。
 したがって、包茎の人は、いつも清潔にして恥垢がたまらないよう心がけることがたいせつです。そして、なにか不安があれば、一人で悩まず、一度泌尿器科の医師に相談してみるのもよいでしょう》

 

「亀頭包皮炎の原因」
《亀頭が包皮におおわれている状態が長期間におよぶと、包皮の内板と亀頭の間に恥垢(スメグマともいい、この部分特有の垢)がたまってきます。恥垢は尿で汚染されやすく、細菌が感染しやすいうえ、体温や尿による湿り、外気にふれにくいといった条件から、細菌繁殖の温床となりやすいと考えられます。
 したがって亀頭包皮炎は、包茎であることが多い子どもに多くみられますが、包皮の翻転(陰茎の根もとへ表皮をよせて亀頭を露出させる)を行なわない成人にも生じます》

(小学館『ホーム・メディカ 家庭医学館』1999年初版より引用)

 
 これらを読んでみても、本当に丁寧な説明で納得する。安心する。思春期に差し掛かる子らに、まず何より、ネットの記事や広告を鵜呑みにするなよ、ということを言いたい。そして“赤本”であれ“緑本”であれ、こういう本が家庭に一冊あれば、どれほど心強いか。
 しかしながら肝心なのは、「本を開く」ことである。仮にこのような本が家に置いてあったとしても、開くことを忘れていては何の意味もない。哲学書であろうとマンガであろうと、読まずして本は、タダの紙の束にすぎない。「本を開く」ことを忘れてはならないのだ。肝に銘じておこう。

〈了〉
『家庭医学館』の緑本

“緑本”小学館『ホーム・メディカ 家庭医学館』

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