男に異存はない。包茎の話。

赤ちゃんはどこから生まれてくるの?

2019年1月24日

ピーター・メイル著/谷川俊太郎訳『ぼく どこからきたの?』

 小さな子どもにも、正しい性教育を――。
 子ども達から「赤ちゃんはどこから生まれてくるの?」と訊かれたら、きちんと性を教えるチャンスかも知れない。そんな時、こんな本を差し出して、一緒に読んであげることができれば…。
 ピーター・メイル著、谷川俊太郎訳、絵はアーサー・ロビンス、デザインはポール・ウォルターの絵本『ぼく どこからきたの?』(河出書房新社、原題は“Where Did I Come From?”)。
 この本の初版はちょっと古く、なんと1974年10月で、私が持っているのは、2011年6月の第4版。内容自体にはまったく古さを感じない。表紙にはこう記されている。《あるがままの いのちのはなし。ごまかしなし、さしえつき。》
 
 私は以前(5年前の4月)のブログ[Utaro Notes]「性教育本の名著を伝える〈一〉―ぼく どこからきたの?」でこの絵本を紹介した。性教育本として、あまりにもすてきな絵本だったからだ。その折、私はこの本を、子どもが小学校に上がる頃を見計らって、そっと家の書棚に置いておけばいい、大人達が不要な知識や想像を与えるくらいなら、力んで教える必要はない――と論じた。性教育の問題に“慣れていない”日本人の保護者や先生を擁護する形で、『ぼく どこからきたの?』をやわらかく紹介したつもりだったのである。
 しかしその後、私は日本の性教育のお粗末な状況を知った。愕然とする有様である。必然的に、幼児の段階でも、ある程度の性教育が必要であること、特に自分の体のことや生理と衛生について、幼い子ども達にもしっかり教える必要があるのではないかと思うようになり、この本の意味合いやとらえ方の解釈を、もう少し積極的に受け止めなければならないのではないかと悟った。
 

じぶんは「つくられて生まれてくるのだ」という事実を伝える

 ずばり、この絵本『ぼく どこからきたの?』は、幼児から小学生向けの素晴らしい性教育本である。「じぶんがどこからきたのか?」だけを主題とし、隠すことなく、その事実を語りかけてくれるものである。
 
 まず明確に、子ども(赤ちゃん)は、おとなが「つくる」のだということを示している。大人が昔とぼけて語ってきたような、“こうのとり”説や“ねこ”説を否定し、もちろん誰それから“もらわれて”きたのでもない、おとなが「つくって」、じぶんは生まれてきたのだということ。しかも大事なことは、そのおとなとは、じぶんのおとうさん(男)とおかあさん(女)だということを、はっきりと示している。
 おとうさんとおかあさんの体つきはそれぞれ違っていて、その身体的な外見の特徴についても関心を抱かせてくれる。その点、絵がとてもユーモラスで好感が持てる。それから、大切なところの名称も覚えてもらう。ちぶさ、こし、ペニス、ヴァギナ。体つきのそれらの違いが、きみを「つくる」ための“ぶぶんひん”となっていると、谷川俊太郎の名訳で述べている。
 

「セックス」と「あいしあう」は子どもに伝えるべきとても大事なこと

 《それは ベッドのなかで おこる》ことがおおい――。この絵本の、セックス(性交)に関する分かりやすい記述。考えてみれば、保護者や先生が、子ども達にセックスをどう伝えればいいのか、いちばん悩む箇所でもある。そうして悩んだ結果、端折ってうやむやにする場合が多いのではないだろうか。
 
 しかし、子どもにはしっかりと事実を伝えなければならない。「セックスをして子どもが生まれてくること」は、子どもに伝えるべき重要案件だ。なんのための性教育か?――を冷静に考える。とにかく嘘はダメである。嘘は、子どもとの信頼関係を失ってしまう最初のきっかけとなるから。子供の頃を思い出してみよう。大人に嘘をつかれて、あなたはその人を信用できましたか?
 
 話を戻す。とても大事なことだが、「つくる」と言ってそれきり大人が語らなければ、どうやって「つくる」のか子どもには伝わらないのだ。肝心なのは、《ベッドのなかで おこる》ことがおおい、ということ。
 ピーター・メイルと谷川俊太郎訳の文言は、この“ベッドの中の出来事”の箇所が、いちばん詩的で画期的。しかも意外に正確。嘘がない。大人は、セックスの中身についてが恥ずかしくてうまく説明できないから、ごまかしたりするのだ。そう考えると、やはりこの絵本は名著なのである。どんなに読み聞かせが不得意な保護者であっても、絶対に言い忘れちゃいけない言葉は、「あいしあう」である。愛し合って、子どもを「つくる」――。
 
 絵本では、ベッドの中の出来事が語られたあと、“せいし”“らんし”の物語となって受胎が語られ、出産までの“9かげつ”のお腹の中の話が、ひとつきめ、ふたつきめ…といった記述で進行し、じぶんがこんなふうにしてお母さんのお腹の中から生まれ出てきたことを伝える。この時初めて、「ぼくがうまれたことの理由」が分かるしくみだ。
 男と女が何かをきっかけに出逢い、やがて「あいしあう」。そしてこれはいずれ、じぶんが大人になるにつれて同じく経験していくことなのだ、ということを忘れてはならない。「あいしあう」ことと命の誕生の尊さとは、子どもにとって最も親和性のある感動の物語=自己肯定感であるかも知れない。
 

小学校低学年までに伝えたい『あっ! そうなんだ! 性と生』

 さて、紹介したいもう一つの本。編著・浅井春夫、安達倭雅子、北山ひと美、中野久恵、星野恵、絵・勝部真規子による子ども向け絵本『あっ! そうなんだ! 性と生』(エイゼル研究所)。初版は2014年3月。私が所有している本は2017年8月の第7刷だった。ちなみにこの本の編集協力には、一般社団法人“人間と性”教育研究協議会が参加している。
 
 子どもが成長し、いろいろなことを知りたがって大人に難問を投げかけてくる、言わば幼児から小学校低学年の頃、からだや性のことを訊いてくる瞬間が必ずやってくる。そんな時、率先してこの本『あっ! そうなんだ! 性と生』は役立つと思う。大人達(保護者や先生)がそうして子どもと向き合う際に必要な、正しい性の知識(情報)を、この本はしっかりと担保してくれているのだ。この本は、子ども向けの絵本編と、大人向けの解説編とを用意しており、読み聞かせる大人はまず、後半の解説編をよく理解してから実践するといいだろう。
 
 『あっ! そうなんだ! 性と生』は大きく分けて、
①からだのこと(男と女のからだの違いや月経、射精のこと)
②いのちのこと(出産、死について)
③多様な家庭環境の違いの認識、性被害にあった時の対応の仕方
 を子どもに伝える主旨となっている。
 特に①では、性器やそれに関する名称を基本として覚えること。そして性器の洗い方月経ペニスのこと、射精についてが詳しく述べられている。
 
 ところでこの本では、①に続き、②の「いのちのこと」のページで出産や死について述べられているのだけれど、先の①の月経射精が語られたあとの、②の受精から出産への流れ、というのがいきなりすぎ、語る順番としてどうなのか――。『ぼく どこからきたの?』を読んだ後なのでなおさら、違和感を覚えた。私としてはこの点、唐突な感じが否めず、読み聞かせを工夫する必要があるのではないかと思った。
 
 むしろ子どもには、①の次に③の多様な家庭環境の違い愛についてを先に語り、愛するパートナー同士が出逢ったのち、共同生活をするようになることが多い…云々を教えた方が、受精以降のプロセスに関して、子ども達は納得するのではないか。
 

愛するってどういうこと?

  「赤ちゃんはどこから生まれてくるの?」の子どもの質問をきっかけに、こうした絵本を読み聞かせることは大切で、単にそれが、お母さんのお腹の中から生まれてくるセックスをして赤ちゃんができる、ことを教えるだけの問題ではないはずだ。子どもの質問をきっかけにし、性教育のためにその都度、読み聞かせをおこなう。が、もう少しゆるい時間をかけて、最も肝心なことを伝えるべきなのだ。それは――。
 
 愛する人とはセックスをすることがあるセックスをすると妊娠することがある妊娠しないようにする(避妊)方法もある、をまず理解してもらう。そのうえで、愛していない人とはセックスをしない、ということも教える。じゃあ、愛するってどういうこと? それがまさに本題。
 
 愛するってどういうこと? それを知るのが、人が生きる=「人生」の大きなテーマだ。言わば長い長い宿題である。学校に行って勉強するのはなんのため? 愛する人を将来支えるため、だ。
 厳密に言うと、愛する人同士が支え合うため。愛する人というのは、人それぞれ違って、親であったり子どもであったり、友達だったり恋人だったり。あるいは、遠い国の人だったり、動物だったり、モノゴトだったり。ぜんぜん違う。違うのだけれど、とにかく自分が愛する人を将来支えられるようになるために、学ぶのだ。これが「社会」の根幹部分であり、これが崩れたら、えらいことになる。
 
 生きるとは自由であり、自由の中には、それ相応の節度も必要になってくる。愛していない人とはセックスをしない。これが分かっていない人が、世の中にはたくさんいる。子どもはそのことに、いずれ否応なく気づいていく。

〈了〉

絵本『ぼく どこからきたの?』

ぼくは動物や病院でもらわれてきたんじゃないだよ

ぼくをつくったのはおとな。お父さんとお母さんがつくる

お母さんとお父さんのからだのちがい

お父さんとお母さんが愛し合ってぼくがつくられた

赤ちゃんはこうやってお腹の中で大きくなっていく

絵本『あっ! そうなんだ! 性と生』

おとなのからだになるってどういうこと?

性器の洗い方をきちんと教える

赤ちゃんはお母さんのお腹の中から産まれてくる

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