男に異存はない。包茎の話。

NHKきょうの健康―思春期男子の“シモ”の悩み

2019年8月13日

NHKの夏休み恒例は若者向け性教育

 昨年の夏に当サイトで、NHKのEテレの番組「ウワサの保護者会」「性のはなし、してますか?」の話題を取り上げた(「性のはなし、してますか?」参照)。夏休みシーズンになるとNHKさんでは、こういった性教育関連の番組をまばらにやってくれる――ということで、私自身が小学生だった頃からも、その認識は少しも変わっていない。若者の教育を担う番組作りとして高く評価すべきである。これからも是非、NHKさんにはこの“定例行事”を続けていただきたいと私は思っている。
 
 さて、今年の夏もまたNHKさんでは、思春期の若者向けの、性に関する番組が放送された。その一つを紹介する。
 Eテレの毎週月曜から木曜、20時30分からの15分枠の長寿番組「きょうの健康」。先日、「夏休み特集 みんなの保健室『思春期男子の“シモ”の悩み』」の回を放送していた。解説は獨協医科大学・埼玉医療センターの小堀善友さん。俳優で松竹エンタテイメント所属の前田航基さんもコメンテーターとして出演し、若々しい雰囲気でいい具合の進行役に徹していた。内容はタイトル通り、思春期男子の性の悩みで一番多い、性器(ペニス)のこと。
 

精巣捻転症と包茎

 1つめのトピックは、突然性器が痛み出す「精巣捻転症」(せいそうねんてんしょう)。陰嚢の精巣にある「精索」(せいさく)という精管や血管、神経管の部分(電子機器で喩えると複数の配線がまとまっている箇所)が回転して捻れると下腹部が痛む症状で、乳児期や成長期に起こるのだそうだ。痛み出してから約8時間で精巣が壊死してしまうらしく、性器に痛みなどの異常を感じたら、すぐに病院へ、とのこと。
 
 もう一つの悩み(相談)は、「包茎」。思春期男子の性の悩みで最も多いのが、この「包茎」である。
 番組では、若者達の座談会的なトーク・シーンが挿入されて、そこでざっくばらんに、“剥けてない”とちょっと恥ずかしい…といったような本音を代弁する会話が構成されていた。
 
 「包茎」には「真性包茎」「仮性包茎」とがあって、自分で包皮を剥くことができる「仮性包茎」は、特に問題はないという小堀さんの解説。一方の「真性包茎」のうち、自分で包皮を剥こうとしても先端の包皮がきつくて亀頭を締め付けてしまう「嵌頓包茎」(かんとんほうけい)というのがあり、いずれにしても「真性包茎」の場合は、医療機関に相談して欲しいとのこと。
 また、幼児の子どもを持つ保護者が、うちの子どもは「包茎」だからと心配して、早くから手術を希望する人がいるが、成長期にペニスは大きくなり、自然と剥ける場合がほとんどなので、あまり心配しなくてもよい、といったようなアドバイスも。
 手術の処置をしなければならない事例は、ほとんど稀で、「包茎」の診療に来る人のうち、そういった事例は、わずかなのだということを、頭の片隅においておけばいい。ただし、美容目的の整形治療はこの限りではない。
 

美容目的の整形治療について

 美容目的で「仮性包茎」を整形治療することについては、残念ながら番組の中ではいっさい触れられていなかった。
 自分のペニスの見た目がかっこ悪い――すなわち「仮性包茎」で特に問題はないと言われても、普段被っているのは恥ずかしいし、友達に笑われそうだから、「包茎」を治したい――といった、心情的不安から来る美容整形の是非については、むろん、健康を害して医療を受けるのとは違う側面であるため、「きょうの健康」の主旨と合わない、という道理はよく理解できる。
 だけれども、若者の「包茎」の悩みの起点にあるのは、まさにその見た目云々の問題なのであって、それに加え、“「包茎」だと不潔だ”――という誤ったレッテルの問題もあるが、ワンポイント・アドバイスでもかまわないから、それらのことについて触れて欲しかった。実際、ここが解決しなければ、思春期男子の悩みは消えないのである。
 
 先述した若者達の座談会のトーク・シーンでは、“剥けてない”と恥ずかしい、といった心情を表す会話があった。“剥けてない”と恥ずかしいよね、かっこ悪いよね、とか、おっきいペニスじゃないと、女の人はアレの時、喜ばないよね、といったペニスの形にまつわる様々な迷信――ある種の間違った常識が、少なくとも日本では、昔からずっと蔓延していることは確かであり、今も変わらない。そうした間違った常識が安易に美容目的の整形治療(「包茎」治療や「陰茎増大」治療)を求める素因となっていて、これは、ほとんどの人がペニスに関する正しい知識を持ち合わせていないことが原因だと思われる。
 
 公教育の保健の授業で「包茎」がいっこうに語られないことによって、若者達は今もこうした古い通念に縛られ、悩んでしまっている。何故そこで、正しい知識を与えることができないのであろうか。
 

包皮を失うということはどういうことなのか

 成長期にペニスが大きくなり、自然と包皮が反転しやすくなる度合い(全部剥けているか半分剥けているかといったような剥け方の度合い)は、人それぞれであって、陰茎亀頭亀頭冠(カリ首)まで露出している人もいれば、尿道口まで包皮が覆ってまったく露出していない人もいる。
 ペニスの形状は実に様々である。亀頭が露出しているペニスがとくに優れているというわけではない。にもかかわらず、日本では古来より、亀頭が露出したペニスが誇らしく優越的で、そうした一種の偶像崇拝に近い観念が、常識的な通念として消えなかった。ところが実際、欧米その他の国々では、見た目、亀頭が露出していない人=“ナチュラル・ペニス”の人の方が圧倒的に多い(すなわち、ほとんどの人が「仮性包茎」であるということ)。
 こうしてみた時、ペニスの形状というものは、医学的見地とは別の観点で、その地域の文化や通念、宗教的側面に強く帰依した象徴であることが分かる。
 
 美容目的の整形治療をおこなった場合の、ペニスに係るリスクについて、ほとんどの人が知らないのも問題だ。
 本来ペニスの包皮というのは、幼児期から成長期において、亀頭部分を保護する役割があるから、子どものうちから包皮を切除する必然はまったくないどころか、保護の役割を果たす包皮が少なければ、亀頭を傷つけるリスク子どもが汚い手で亀頭を触ったりする)が高まることは自明である。
 また、余分な包皮があることによって、性感帯として敏感な部分である亀頭は常にその感度を保たれて守られ、勃起すれば自然な形で包皮は反転し、性交時のピストン運動も無理なくおこなえる仕組みとなっている。包皮そのものが性感帯であるという学説もあるのだ。
 もし、「包茎」の整形治療をおこなって包皮を切除した場合、勃起時に自然な形で反転するかどうか、少なからず反転形状の問題点が残りかねないので、これは「勃起不全」につながるリスクとなってしまう。
 子どものうちの包皮切除によって亀頭を傷つけるリスクが高まるのと、勃起時の包皮反転に伴うリスク、そして何より、性感帯を失ったペニスでマスターベーションや性交をおこなうといった性的感覚の損失リスクを負ってまで、美容目的の整形治療をおこなうべきかどうか、よくよく熟慮して判断する必要がある。
 
 日本人は、ペニスは“剥けてない”と恥ずかしいという通念に、これまでずっと縛られてきた。例えば公衆浴場といった所では、見栄で亀頭を露出させている人が案外多かったりする。
 だが、統計的に見れば、世界の成人男性の70%が「仮性包茎」であると言われていて、見た目、剥けていないペニスの方が普通なのである。ペニス自体が清潔であるならば、普段は剥けていようが「包茎」であろうが、機能としては変わらない。日本人の多くが誤解している、「仮性包茎」は少数者なのだ…という擦り込まれた迷信と思い込みの認識は、即刻捨てるべきだろう。

〈了〉

NHKきょうの健康「思春期男子の“シモ”の悩み」

解説は獨協医科大学・埼玉医療センターの小堀善友さん

コメンテーターは俳優の前田航基さん

番組のトピックスは精巣捻転症と包茎に関する悩み

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