奈良林祥先生のセックス講義

セックスオーガズム

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性生活の実際―セックスの実践

6.性興奮と性感帯

 

性交における体力の消耗

 性交をすると、体力はどれくらい消耗するのか。むろんそれは性行為の内容によって様々であるが、ごく平均的には、椅子に座っておこなう事務的な仕事の10倍以上であり、100メートルを全力疾走したか、1,000メートルを走ったくらいのエネルギーの消耗、ということになっている。性交に夢中になっている当人は意外と分からないものだが、「前戯段階」から性器結合のあいだ、相当に筋肉を動かしており、内臓もその分働く。性行為の始めから終わりまでの脈拍数を調べていくと、かなり心臓に負担がかかることが分かっている。
 
 その脈拍数の変化を大まかに説明すると、普段の生活で1分間に70前後脈拍数が、性行為のプラトー期では男女とも1分間に120程度、オーガズムともなれば、1分間に180という速さで心臓は働く。しかも女性の場合は、1回の性交の中で、数回もオーガズムに達するとなれば、その度に心臓はフル回転させられていることになる。血圧を例にとれば、オーガズムに際し、240にまで及ぶこともあるという。心臓がそれだけ働くということは、酸素の補給も相当量である。当然、呼吸数は倍以上に増える。このため、横隔膜の運動量もそれだけ大きくなる。
 筋肉の消費するエネルギーも実に大変なものである。大腿筋、臀筋、腹筋などが伸縮し、肺、下腿、手足の指、首筋、目、唇、舌と動かす筋肉は多種多様で、多量の発汗も避けられない。夏期における性交オーガズムに際しては、全身の筋肉の硬直けいれん等の運動によるエネルギーの消費はすさまじい。スポーツでいうと1,000メートル走に匹敵すると先に述べたが、性交による疲労の場合、スポーツのそれとは違って、かなり神経系統の疲労も含まれることになる。
 
 こう書いてしまうと、性交はただ疲れるだけだと思われるかも知れないが、こうした疲労はむしろ、翌日の活動のための熟睡の序曲として、人のからだは整えてくれるので安心して欲しい。スポーツの後の汗を掻いた疲労感が実に爽快であるように、性交の後の疲労感も同様に爽快である。
 オーガズムに達すると、アフター・スリープという深い熟睡感にいざなわれ、そこで一気に性交による疲労を帳消しにしてくれる。1時間から2時間の熟睡が続けば、性交の疲労はすっかり取れてしまうのである。逆に言うと、オーガズムの後でアフター・スリープが取れない場合、性交の疲労がそのまま日常生活に持ち込まれることになってしまうので注意。性交の後のアフター・スリープを、生活の中で生かす知恵としたいものだ。 

「愛液」と性興奮の男女のメカニズム

 中国の古い言葉に、「陰中に泉を生ず」というのがある。これは女性が性的興奮をすると、外陰部が濡れた状態になることを指している。
 この外陰部が濡れた状態にしてくれる分泌液のことを、俗に「愛液」などと呼んだりするが、これは昔、外陰部にあるバルトリン腺からの分泌液性興奮の高まりで増えるからだと考えられてきた。しかし、この説は誤りで、「愛液」という分泌液は、性的興奮の開始とともに腟壁から汗の玉のように滴り落ちる濾出液が外陰にまで流れ出てくるものであることが分かった。バルトリン腺からは実際、ほんの1、2滴ほどの分泌液が出るに過ぎない。
 この腟壁からの濾出液のしたたりは、生理的ないしは肉体的な性的刺激が加えられ始めて10秒から30秒もすると、もう汗が噴き出るようにしたたり出てくるほど、すばやく起こる反応である。言うまでもなく、この分泌液が豊かに溢れ出れば出るほど、男性性器の挿入の潤滑油的役割を有効に果たすのだから、性器の結合は、少なくとも腟壁からの分泌液が外陰を濡らすほどじゅうぶんに湧き出てから、というのが性交の常識である。
 
 ただし「愛液」分泌は、必ずしもすべての場合がすばやく起こる反応というわけではないことを、心に留めておくべきだ。女性の性反応は多様で複雑で、きわめて心理的な影響を受けやすい。女性の心に何らかの不安感不満妊娠への恐怖などがあったりすると、腟壁からの分泌液極端に減少し、あるいはまったく起こらないということもある。日頃の性生活の不安やモヤモヤ感を解消しておくことが、結果的に性交における女性の性反応を良好にするいちばんの解決策であることを忘れないようにしたい。
 
 性興奮が高まると、男性の性器の尿道口からも少量の分泌液が溢れ出てくる。尿道内に分布しているカウパー腺という粘液腺からの分泌が増加した証拠であり、これも女性と同様、性的興奮が高まった証拠として一つの目安となる。
 性興奮プラトー期に至ると、女性の外陰部はさらに重要な変化が起こる。外陰部が充血して大陰唇が膨張し、それまでぴったりと合わさっていたの入り口を守っていた左右の小陰唇は、それぞれ右と左に分離し始め、それまで閉じた貝殻のようであった外陰部が、いとも自然に男性器の挿入のために自ら扉を開いたような様相を示す。
 性器の挿入というのは、無理におこなうべきものではなく、女性の心が性交の雰囲気に馴染み、性的興奮が順調に高まるようになれば、外陰部「愛液」なるもので濡れるだけではなく、小陰唇までが、男性器を迎え入れるようにして左右に開いてくれるようになるのだから、その性的興奮の状態をはかれば、挿入は無理なくおこなえるものなのである。 

前戯の大切さについて

 現代的な性交観を述べるとすれば、前戯こそ性交の中心であり、射精オーガズムは単なる締めくくりに過ぎない。これはすなわち、オーガズム万能主義であった従来の性交から脱却し、前戯中心の性の交わりへと成長しよう、ということである。前戯に費やす30分なり1時間なりをいかに華麗に、充実して過ごすかということが、性交にとっての中心的課題となる。
 
 とは言いつつ、何も難しいことを要求しているわけではない。ペッティング(愛撫)を豊かに展開すればいいだけのことである。そのペッティングを中心とした前戯から、性器結合に至る順序の例を図に示したので、参考にして欲しい。
 これはあくまでバリエーションのうちの一つに過ぎず、どういった順序で前戯を豊かにするかは各々の自由である。また、「前戯段階」で性器結合してはいけないという理由もルールもない。それもヘビー・ペッティングのメニューの一つである。ヘビー・ペッティングは女性のみ「前戯段階」オーガズムに達するのに効果的であり、ヘビー・ペッティングでなくとも、男性は、前戯ペッティング女性を1度目のオーガズムに到達させるくらいの「セックスの技量」を持ちたいものだ。 

女性と男性の性感帯について

 女性と男性の性感帯を表に表したので見ていただきたい。女性の性感帯は、全身にあると言われている。唇、口腔粘膜、舌、乳房、乳頭、外陰部などはきわめて敏感で、これら代表的な性感帯の他には、額、瞼(まぶた)、耳朶(じだ=みみたぶ)、項(うなじ)、首筋、胸壁、腋下、掌(てのひら)、腹壁、大腿内側、蹠(せき=あしうら)など、実に広範囲にわたって女性の性感帯は分布している。このことは、女の性が本質的に「性を与えられる」ようにできているためで、刺激され、愛撫されるのをからだ全体で待っている、ということに他ならない。
 性感帯のうち、とりわけ敏感なのが、外陰部である。最も敏感なのが陰核(クリトリス)であり、次に小陰唇内面、その次が小陰唇外面、次いで腟前庭大陰唇ということになっている。むろん、個人差があるので、どこがいちばん感じるかは人それぞれ違う。パートナーの「最も敏感な性感帯はどこなのか」を早く見抜き、どこをどう刺激すれば、強く興奮するかを知る努力をすべきであり、性生活の調和を作り上げるのに役立つ努力であることと理解していただきたい。
 
 一方の男性の性感帯は、非常に限られていて、性器だけであるということがよく言われる。といっても性器全体がどこでも感じやすいわけではなく、亀頭の裏側に紐のようについている包皮小帯とその左右のあたりや、亀頭溝といわれる部分が最も感じやすく、それから亀頭縁尿道口などとなっている。
 女性としては、このような箇所の男性の性感帯に対し、手指や舌などを用いて刺激を加えたり、男性によっては乳頭に刺激を受けたり吸われたりすると、それだけでも非常に性的興奮が起こることもあり、覚えておくといい。
 
 性反応の経過には、男女差があることは既に述べたとおりであり、またそれに加えて個人差もある。お互いの性的興奮が始まり、性交へと進み、オーガズムに達し、性的興奮が消えていくという性反応の経過は、全体像としてはその通りである。が、個々の性反応を察知しながら、臨機応変に性交へのこまやかな過程を変化させつつ楽しむということは、性生活を永年継続していくための、飽きさせないお互いの調和として、必要な探求心であり努力であるかと思われる。性交は自分だけが楽しめばいい、というものではなく、相手を思いやり、相手とともにお互いが性反応の正当な経過をたどることを目的とし、それを楽しむことに意義がある。 

男女の性感帯

セックスを営むプロセスの一例

 特に男性の場合、男性ホルモンの絶対量の関係から、性的興奮は高まりやすく、その興奮が急速に頂点に達してしまいやすい、という男性の性反応の大きな特徴があり、またこれが欠点でもあるということは、よくよく踏まえておく必要がある。男性がその自己本位の性反応に終始するあまり、相手の性反応との不和が起こることが多分にあるからだ。
 したがって、男性はやたらと性興奮が高まらないよう、ブレーキをかける、ということに努力し、女性はなるべく積極的に性交の中に心身を注入すること、という女性側の協力も必要となってくる。そうしたお互いの共同作業の積み重ねが、性生活を続けるうえで大切であり、より豊かで持続性のある性の楽しみ方を維持する秘訣となるだろう。 

女性の不感症について

 女性がどうしても性交におけるオーガズムを感じとれない状態不感症という。これは肉体上の原因で起こることはまずない。むろん、ホルモンの異常などということでもない。女性が不感症であるということは、つまりが、「感ずるのは、いや」と、快感を味わうことを拒否しているということであり、言葉で言えないことをが代弁している、ということである。
 人間生活、とりわけ夫婦生活の営みの中で、夫の浮気っぽさをどうしても許せないとか、信用できない男にからだを許すのはいやだ、と思っても、夫婦である以上性交がおこなわれても、妻は不満を漏らすことができない。しかし、腟がそれをしっかりと代弁してしまっているのである。私はあなたに心から服従していません、からだは許しても心は許してませんよ、ということを不感という症状をもって表しているのである。 
 だから、妻が不感症である場合は、夫にその原因があると考えてみる必要があるわけで、おまえは不感症なのだから婦人科に行って診てもらってこい、というのは、的外れな言葉であるということを認識した方がいい。
 他にも女性が不感症状を起こす場合の一つが、性交における男の思いやりのなさが考えられる。「前戯段階」が不十分で、拙速に性器結合をすることしか考えない男性、こういう性交が繰り返された場合、女性の性興奮曲線からみても、とても男性の拙速な性反応についていけるわけではないので、不感症は生じてくることがある。

 女性自身の方に原因がある場合では、無意識に性へのブレーキをかけている状態にあれば、不感症は起こりうる。例えば、幼少時代に両親の性行為を見てしまい恐ろしさを感じたとか、過去に性的悪戯をされたことがあったり人工妊娠中絶による妊娠恐怖症に追い込まれた、といったトラウマが、オーガズムに達することを妨げ、自身の性行為時に無意識にブレーキをかけてしまっていることがある。
 このように、不感症における性の不調和の原因は、意識されているものか無意識の領域のものかは別にして、ほとんど心の問題であると考えるべきで、それに適した治療(カウンセリング精神分析など)をおこなうことが望ましい。性交の調和を作り上げていくためには、見かけ上の性的な技術だけでは事足りず、メンタルな健康が重要になってくる。 

男性の早漏・遅漏、インポテンツについて

 男性の性的不調和の症状には、早漏遅漏インポテンツ(勃起不全)などがある。
 早漏とは、性交時に射精が早すぎる現象をいう(その逆が遅漏)。早漏が起こる原因はとかく、性体験が乏しく性交に不慣れな若い頃にありがちであるが、それとは別に、生来自意識が強く、協調性をあまり重んじない人に起こりやすいと考えられる。とりわけ自己中心的な快楽を求める性交で、前戯ペッティングがほとんどなく、すぐに性器結合をしたがる傾向にある人は、女性のゆったりとした性反応と噛み合わず、結果的に性的不調和の原因となりやすいので、性行為そのものの抜本的な改善が必要だ。
 
 性興奮が迅速に高まりやすい人(特に若い男性)は、できるだけオーガズムまでの時間を延ばすよう工夫し、自在に射精タイミングを操縦できるように訓練する。
 それはオナニーの時に、射精までの時間をゆったり延ばしていく訓練である。このオナニーの内容自体も、性交における快楽の調和をもたらすための重要な準備体操であるので、オナニーだからといって決しておろそかにしてはいけない早漏の人はオナニーの頻度を増やしつつ射精に至るまでの過程、すなわち性的興奮を抑えながら快楽を得るリズム、その性反応の操縦術を学んで欲しいものだ。
 インポテンツもまた、女性の不感症と同様、心的精神的な問題である。例えば若い時分の一度の性的不調和の体験が、あまりに神経質となってそれ以降、勃起不全となることがあり、自信を喪失した心理的不安がいざ性交の時に性反応を抑えてしまうのである。
 
 女性の不感症や男性の早漏(遅漏)インポテンツといった心的な問題を解消するには、専門家の助言を採り入れつつ性生活の中で性の満足の度合いを高めていく努力目標をもつこと肝心だ。性の満足ということを定義するとすれば、次のようなことになる。「性交の結果、性器周辺に生じた生理的快感を、性交を営めた満ち足りたものとして心で感じ取り、性の満足として全身を包む」
 性の満足とは、性器で感じ取ることではなく、心で感じ取るものであって、不安不満があったり、心から相手を受け入れることができなければ、いくら性器周辺に快感は起きても、それが性の満足にまでは拡大しないということである。お互いが性生活についてポジティヴに向き合い、具体的な改善なり努力なりをしていくことが、性の満足の度合いを高めることにつながる。そうしてお互いの愛情もまた相乗的に深め合えるものなのだ。

〈了〉

男女の性興奮曲線の違い