コロナ感染すると男性不妊リスク高まる?

2021年4月7日

 
 感染症における男性の生殖機能(精子減)との関係。例えばおたふくかぜの原因となるムンプスウイルス、ジカ熱を起こすジカウイルスは、男性の精巣内の細胞が感染して攻撃を受けるインフルエンザでは、高熱で精子が死滅するというリスクがある。では、新型コロナウイルス(COVID-19)ではどうなのか。実は、新型コロナウイルスに感染後、回復した人の精子の数を調べたら、精子が減少していた――という海外からの研究報告がある。

コロナによる精子減―海外からの研究報告

 この報告を伝えているのは、2021年3月28日付朝日新聞朝刊の記事「感染 男性不妊の原因に?」。これまで、新型コロナウイルスは、抜け毛嗅覚障害などの後遺症があると取り沙汰されてきたが、ここにきて男性不妊につながるリスクについても懸念する報告が上がってきている。
 新聞記事によると、イタリアの研究チームの3月の論文発表では、新型コロナウイルスから回復した43人のうちの4分の1にあたる11人が、無精子症乏精子症だったという。ドイツの研究チームは1月、コロナ感染から回復した84人と同年代の健康な105人の精液を60日間にわたり、10日間隔で調べたという。すると、感染者の方は健康な人と比べて、精子の炎症や酸化ストレスを示す数値が高かったという。
 
 記事では、「新型コロナが精子に影響を与えうるメカニズム」と題し、それを箇条書きにして図表にしている。
 ウイルスが原因の場合は、精巣内の細胞ウイルスが感染、全身の血管障害が引き金となって精巣内に炎症ができ、精子の元になる精原細胞が死滅して、精子がつくられなくなる恐れがある。
 メカニズムのもう一つ、高熱が原因の場合は、高熱によって精巣内の精子が死滅するが、一般的に解熱から2、3ヵ月で精子は回復する。ただし、精原細胞が死滅すると回復できないリスクがある。
 現時点で、新型コロナウイルスの場合、どちらのメカニズムが働くのかよく分かっていないという。中国のいくつかの研究チームから、新型コロナのウイルス精巣内の細胞に感染していた痕跡“ACE2”があったという報告や、昨年5月、新型コロナに感染中もしくは回復した38人のうちの6人の精液から、ウイルスが見つかったという報告もある。また、亡くなった人の精巣を解剖した結果、精巣内にウイルスの痕跡があったという報告も――。
 

2021年3月28日付朝日新聞朝刊「感染 男性不妊の原因に?」

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発熱原因説が濃厚?

 東京医科大の解剖学の伊藤正裕教授によると、精原細胞が感染したと証明する報告がまだないという。伊藤教授は、ウイルス精巣内細胞への直接感染説に否定的で、新型コロナに感染し過剰な免疫反応が起きた際、血管が炎症を起こし、精巣内の毛細血管も損傷を受け、炎症が起きる。すると、精原細胞が死滅したり、精巣内ウイルスが紛れ込んだりする可能性があるという。精巣内の毛細血管から赤血球が漏れて、リンパ球が増えたという報告から、発熱原因説の可能性が高いことを裏付けているという。
 男性不妊に詳しい順天堂大付属浦安病院の辻村晃教授によると、精巣内の細胞が感染すると精巣の痛みや腫れがもっと報告されるはずだから、伊藤教授と同様、発熱原因説の可能性を示唆する。熱によって精子が死滅するのは一時的な現象だが、精子をつくる精原細胞が破壊されると回復は難しいという。生殖機能への影響のダメージはまだ分かっていないことが多く、若い人もできるだけ感染しないようにしっかりと対策してほしいとのこと。

〈了〉