の話。
寝た子を起こせ。これは一生に関わる大事なことなんだから。

オシッコと包茎の関係

2018年1月7日

トイレこそ「社会の窓」

 昨年の20171110日の「いいトイレの日」に向けて発表された、日本トイレ研究所(特定非営利活動法人、本社は東京都港区)による「男性のオシッコ事情に関する調査結果」(調査時期は10月)というのが実に興味深かった。当月の新聞にも掲載されたので、関心を持った人も多かったのではないか。また、これに関して私は、前々回で自身の「包茎」にまつわる話を訊ねた、慶應義塾大学総合政策学部2年の和田吉平さんにもいくつか質問をぶつけてみた。
 
 その前にこの「男性のオシッコ事情に関する調査結果」とはいったい何なのかについて説明しなければならないだろう。日本トイレ研究所は、ひっくるめると、トイレ周りの事情を良くしていくための研究をおこなっている団体らしい。この調査の目的は、「男性のオシッコ事情を把握する」ことで、全国の20歳から69歳の男性にネットリサーチをおこない、515の有効回答数を得たものである。日本トイレ研究所のホームページには、この調査結果が公表されているので、興味のある方はそちらを閲覧してみるといい。
 
 この調査によれば、男性の9割が何らかの「オシッコトラブル」を経験したことがあり、そのうち上位にのぼるトラブルが、「オシッコのキレが悪い」とか「オシッコが近い」とかオシッコの残尿感がある、といったもので、それに続くのが、オシッコをした後にちょっと出てしまったとか、パンツにシミができる、というようなトラブルである。またこういった自身のトラブルを、他の人に話さない人が6割、という結果も。知られると恥ずかしいという思いから、排尿・排便の悩みを打ち明けない・相談しない人が多いのではないだろうか。
 
 子供の頃、ズボンのチャックをうっかり開けていたりすると、友達がそれを発見して、「やーい、社会の窓が開いているぞ!」と揶揄されたものだが、何故ズボンのチャックが「社会の窓」なのかよく分からなかった。しかしこうして考えてみると、それに通じてトイレというのは、人間の生理と健康をととのえる大切な場所であるから、やはり「社会の窓」なのだ。そこは人と社会を結ぶ大事な空間なのである。排便と排尿を1日に何遍も繰り返す際、もしこの空間がとても使いづらかったり不潔だったりしたら、衛生状態が劣悪となって、気分的にも日常生活の基盤が揺らいでしまう。自身の健康のことを考えるのと同時に、トイレについても考え直す必要があるかも知れない。そういうことを研究し改善していく団体の一つが、日本トイレ研究所なのだと思う。

男性のほとんどが経験するオシッコの「飛び散り」

 新聞記事でとくに話題になったのは、この調査結果のうち、「オシッコの仕方」に関する質問で、立ってオシッコをする人は55.3%、座ってオシッコをする人は43.7%という回答率。後者の「座って派」が4割にまで増えてきている傾向にあるようだ。自宅のトイレでオシッコをする際、「飛び散り」による汚れを気にする人(トイレを清潔に使用したいという自覚者)が増えてきているのが理由だろう。
 和田くんにも訊いてみた。「立って派」なのか、「座って派」なのか――。彼は「座って派」だという。ではどういう理由で「座って派」なのか訊いてみたところ、こういう答えが返ってきた。
「高3の頃に引っ越したんですけど、、、、引っ越すまでは立ってトイレしてたんです。でも、引っ越した先の便座が上がったままにならなくて、どうしても座らざるを得なくなった結果、座ってするようになってましたw」
 
 さて、そこで私が思ったのは、こういうことである。男性が立ってオシッコをする時の、「飛び散り」の大きな要因となる排尿の滝の落ち方。これが、ペニスの方向とほぼ水平にストンとまっすぐ落ちればいいのだが、滝の流線がえらく鈍角に曲がっていたり、支流ができて二手に分かれたりすると、これが実に厄介なのである。
 ホースの放流を思い浮かべると分かり易い。ホースの先を少し指でつまんで狭めると、一直線だった水の放流の向きや角度が変わり、さらに狭めると、水が二手に分かれたり、霧状になったりする。ペニスもまったく同じ原理で、その時の尿道口の形状いかんにより、排尿の滝の落ち方が変わる。したがって、予測した落ち方以外の場合だと、「飛び散り」の範囲が広がってしまうため、男性が立ってオシッコをすると、トイレをえらく汚してしまうのである(※オシッコがたとえまっすぐ一直線に落ちたとしても、「飛び散り」は少なからず起きるだろうし、座らない限りそれを防げない)。
 
 ペニスの尿道口の形状と「包茎」との関係はないだろうか。「包茎」で亀頭部を完全に覆った状態では、尿道口付近にも包皮があるため、滝の落ち方を予測するのはさらに困難になる。この点について、過去に、包皮が邪魔をして、オシッコがねじれたり2つに割れたりして飛び散った経験ないですか? と、和田くんに訊いてみた。すると、
「めちゃくちゃありました。昔は、先っぽの皮がくっついてうまく出ないとかよくありましたね」
 との答え。この点においては、男性なら誰しも過去に経験しているだろう。最悪の場合、「飛び散り」でトイレを汚すどころではない、滝の流れが反転して我が身に襲いかかり、ズボンを汚してしまったりする。こんな時、世の男性は思うだろう。ああ、大魔神様がお怒りなのだと――。このトラブルを最小限に防ぐには、包皮をきちんと亀頭の後ろまで剥いてオシッコをする以外に、ない。
 
 蛇足になるが、別の意味で「最悪なトイレ」というのもある。衛生状態が不潔で劣悪、しかも男性用の小便用の便器が、個別に並んでいるのではなく、小便器そのものが無い、壁に向かってオシッコをするタイプの、昔の公衆トイレ(“公衆便所”という古風な名にふさわしい)――。仕切りも何も無いから、男性らが横並びに立ってオシッコをする時、隣の人のペニスが丸見えになってしまうのである。
 もしそうした時、オシッコがねじれて隣の人に被害を及ぼしたら…と想像すると、プライバシーも衛生もあったものではない。昔のトイレなんて、そんなことちっとも考えていなかったさ。え?今でもこのタイプの公衆トイレ、あるのでしょうか?

〈了〉
おしっこ座って派4割

2017年11月11日付朝日新聞朝刊

座って用足し男の4割

2017年12月27日付朝日新聞朝刊

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