男に異存はない。包茎の話。

ある高校生の言葉からマイノリティを知る

2019年7月16日

 新聞の記事から、LGBT(Lesbian,Gay,Bisexual,Trancegender)に関する時事を読み取り、その性的少数者(性的マイノリティ)が今、いかにして社会と闘い、対等に向き合うための行動及び活動を日々続けているかについて、私の関心がしばらく及んでいる。
 

ニューヨークのLGBTパレードを伝える記事

 去る7月2日付の朝日新聞朝刊では、少なくとも3つの関連記事を確認することができた。
 
 1つめは、ニューヨークのパレードの話題。「性的少数者パレード 夢を手に半世紀」。NPO法人の“東京レインボープライド”のメンバーが、このパレード(LGBTプライド・パレード)に参加した云々が記されていた。 
 ちょうど50年前の1969年6月28日、ニューヨークで「ストーンウォール暴動」という事件があった。折しもこの年の前年、ベトナム反戦と自由主義をテーマにアメリカのヒッピーたちを描いたミュージカル『ヘアー』がブロードウェイで上演され大ヒットとなっており、また事件のあった69年には、ケネス・タイナンのミュージカル『オー! カルカッタ』がニューヨークで初演され、8人の男女の出演者が全裸で踊るなどでたいへん話題になった。アメリカのニューヨークでは、そうした性の解放運動ジェンダーフリーといった社会変革の気運が既存の道徳観をたしなめる兆しとなって、一般市民の高い関心事となっていた。そうした世俗の空気の中、「ストーンウォール暴動」が起こる。
 
《警察が同性愛者の集うバーに家宅捜査に入った。同性愛者らは不当な弾圧だと感じ、初めて集団で立ち向かう出来事があった》

(2019年7月2日付朝日新聞朝刊「性的少数者パレード 夢を手に半世紀」より引用)

 
 1969年の6月30日に起きたこの事件は、近年、映画にもなっている。ローランド・エメリッヒ監督で2015年のアメリカ映画『ストーンウォール』(主演はジェレミー・アーヴァイン、ジョニー・ボーシャン)。「ストーンウォール暴動」に関しては、あらためて別のブログ等で詳しく触れたいと思う――。この暴動を機に、パレードは翌年からニューヨークなどで始まり、世界規模の運動(暴動の日を忘れぬための祝祭かつ純然たる抗議デモ)となった。今年のニューヨークには約700の団体が参加し、過去最大規模となった、と記事にあった。
 

茨城県でパートナーシップ宣誓書を提出したカップル

 2つめの記事。前回お伝えした茨城県の「パートナーシップ宣誓制度」。性的少数者のカップルが、県営住宅の入居申請を求めたり、県立病院などでの面会や手術の同意が家族同等となる制度で、7月1日から始まったばかり。7月2日付の朝日新聞朝刊にあった記事「パートナーシップ宣誓書 2組提出」は、提出した1組である水戸市議の滑川友理さんの、県庁で会見を開いたという内容。レズビアンを公言している滑川さんは、これがゴールではなく、民間でも家族同様に認められれば、と話す。
 別の記事(同日付)で、「性的少数者の実情 当事者訴え」というのもあった。6月29日、茨城県つくば市の市役所で開かれたLGBTの実情や課題を考える講演会で、同性愛者を公表している声楽家・河野陽介さんが話された内容が記されていた。
 
《「かつて自分が同性愛者と公表できなかったように、人には言えない秘密がある。世の中にはさまざまな人がいるのだという視点が、一人ひとりの人権を考えることにつながるのでは」》

(2019年7月2日付朝日新聞朝刊「性的少数者の実情 当事者訴え」より引用)

 
 また、河野さんは同県の「パートナーシップ宣誓制度」の導入について、カミングアウトが必須でハードルが高い、とも述べる。各市町村に相談窓口を設置して、どんな困りごとがあるかの実態を把握することが必要、と訴えた。
 
 ――こうした3つの記事を読み返す。ニューヨークの、性的少数者が集う熱いパレード。イベントを楽しみながら、自分達にある権利(人権)が不当に脅かされない社会を未来に築くということ。その個々の運動と地道な働きかけに胸を打たれる。それから、LGBTカミングアウトした人達の、市民権として当然あるべき「暮らし方の自由」を模索するための、勇気ある行動。マジョリティの通念に潜んだマイノリティに対するあらゆる差別と偏見をなくすこと。そしてそこには、同等の権利と自由があること。地域におけるマイノリティが同じように住みよい、生きにくくない社会環境を構築していくこと。その全体の努力――。
 そして、忘れてはならない。一方では、こうした言葉も目にとまった。《かつて自分が同性愛者と公表できなかった》《人には言えない秘密がある》――。当事者のリアルな言葉が、重く心に響いてくる。
 

ある高校生のLGBTに対する意識の変化

 ごく最近、私は、ある高校の演劇部に所属している男子高校生から、「学校の性教育に関すること」「LGBTに関するいくつかの事柄」について意見を聞く機会があった。彼はヘテロセクシュアル(Heterosexual、異性愛者)の立場であるけれども、学校でLGBTを題材にした劇をやったことがきっかけで、LGBTの人達に対する認識や考え方が大きく変わったのだという。彼が述べた事柄を、以下に要約してみた。
 
 ――小学校ではあまり、深い性教育を受けなかった。中学校に入ってから、人権問題の一つとしてLGBTに関することを講習で学んだ。ただ、その頃は、“オカマ”“オナベ”程度の認識でしかなく、当たり前のように周囲にもLGBTの少数者がいるのだというふうには考えなかった。
 自分の性に対しては、家庭環境などの事情で精神的な成長が他の子達よりも比較的早かったため、生物学的な男性ということに納得していた。小学生の頃はごく当たり前のように、友達とペニスの話をしたりして先生に怒られたりしたけれど、中学生になると、お互いの体に気を遣ったりして、特に(体の変化に)動揺することもなく、友達のペニスを見たり自分のペニスについて違和感を感じるような経験は、少なかった。
 
 高校では昨年、LGBTに関する劇をやるにあたって、部員全員で話し合いを重ねたり、その他の情報源から当事者の人達の思いを真剣に学んだりした。さまざまなメディアでLGBTが取り上げられていて、自分だったらどう行動するだろう、友達がもしそうだったとしたら、自分はどうするだろうか、ということを深く考えた。
 劇の公演が終わった後、自分はレズビアン(Lesbian)だということを話してくれた人がいた。劇のために学んだりしていたことが、実際に自分の周囲にそうした人が当たり前にいることを知り、それは確かに動揺した瞬間はあったけれど、何か特別なことではなく、日常のうえでの、人権の一つであることを胸に刻んだ。
 
 僕の知っている限りでは、周囲で性的なことでのイジメは起きていない。むしろ、性的とか、性別など関係なくイジメは理不尽に起こっていくのではないだろうか。LGBTの人はおそらく、そうでない人達よりもずっと、深く自分のことを思ったり他人にどう見られているかを考えていたりするので、イジメの要因になるような(それと分かるような容姿を含めて)ことはしないよう心得ているのではないか。
 校内では、いわゆるジェンダーレスといった多様な価値観にも寛容なところがあって、髪型に関しては特に(常識の範囲において)制限がない。以前よりも性に関するイジメは起こりにくくなっているのではないか。そういう環境になってきているということ。逆に、LGBTである人に周囲が気づかず、LGBTの人達が当たり前のようにいるとは認識していても、その人達は結局、(精神的に)孤立したままなのではないか。むしろ一人にさせてしまい易い世の中になっているのではないか――。
 

生きにくくない社会の構築とは何か

 普段、包括的な性教育について考える機会がある私でも、実際に子どもたちが学校という環境で、日々、どのようにそれを学び、それを糧とし、生活の実情に役立てているかについて、あらゆる想像を働かせる以外に方法はなかった。しかし今回、高校生の意見を聞くことで、その普段の私自身の想像以外で、もっと深くこまかい部分のリアルな日常を知ることができ、まず何より、私の拙い趣旨に賛同して協力していただいた学生に厚く感謝を述べたいと思う。
 
 学生のあいだにおいては、全体としてまずまず、性的少数者に対する差別や偏見が減ってきているのではないか、ということを想像するのだが、一般社会においてそうした差別や偏見が極端に減っているとは思えない。それは私自身の実感としてである。まだまだ日本では、新聞記事にあったような抗議活動や公的制度の新たな取り組みの浸透は、スタート地点に立ったばかりと考えるべきだろう。ただし、多様な価値観を学んだ若い人達が将来、性別や性的指向、国籍、宗教などで他人を見下したり差別したりする傾向をよしとしない社会を理想として望んでいるのであれば、今の「生きづらい社会」とは少し違った社会になっているのではないかと思う。
 
 今の「生きづらい社会」から、「生きにくくない社会」の未来へ。LGBTに対する差別や偏見をなくし、若者達にはこれまでの古臭い社会(特に男尊女卑の傾向)を徹底して変えていく力があることを、私は信じて已まない。それが本当にどういった社会であるのか、どういった方向により良く突き進んでいくべきなのかについて、山積した課題に対する多くの議論が必要だ。

〈了〉

7月2日付朝日新聞朝刊「性的少数者パレード 夢を手に半世紀」

7月2日付朝日新聞朝刊「パートナーシップ宣誓書 2組提出」

7月2日付朝日新聞朝刊「性的少数者の実情 当事者訴え」

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