教員の性暴力防止法が成立

2021年6月10日

 
 児童や生徒にわいせつ行為をした教員が懲戒免職となって免許失効後、これまでは3年経てば再交付の申請ができ、自動的に受理されてきた。このため、教職員によるわいせつ行為の再犯事例が後を絶たなかった。
 こうしたことから、議員立法による新たな法律が審議され、先月28日、「教員による性暴力防止法」が参院本会議で可決、成立した(公布後1年以内に施行)。この新法「教員による性暴力防止法」は、わいせつ行為をした教員が免許失効後、再交付の申請の際、それを拒否する権限を都道府県の教育委員会に与えるといったもので、教員によるわいせつ行為の再犯に歯止めをかけるのがねらいだ。

同意あるなしにかかわらず性暴力とする

 2021年5月29日付朝日新聞朝刊に掲載されていた記事「教員の性暴力防止法 成立」「免許再交付 教委に拒否権」によると、2019年度には、児童生徒へのわいせつ行為121人の教職員が免職となっている(文科省の公表)。これまで、こうした児童生徒へのわいせつ行為によって免職となった元教員が、別の教育委員会で採用され、再びわいせつ行為をした事例もあったという。
 
 新法では、教員による児童生徒への性交やわいせつ行為を、同意の有無にかかわらず「児童生徒性暴力」と定義し、禁止することを明記した。また、保育士や塾講師などの他の職業についても、対策を取るよう国に求める付帯決議が、先月27日の参院文教科学委員会で可決された。こうしたわいせつ行為を過去にした教員の情報も、新たにデータベース化して整備するよう国に求めた。
 同意の有無にかかわらず児童生徒への性交やわいせつ行為を、「性暴力」と定義したことは画期的なことである。過去の事例において、児童生徒への性交やわいせつ行為に同意があったか否かの論点に苦慮し、教員による性的行為性暴力と認められるまでに著しく不条理な討議が繰り返されてきた経緯があるからだ。
 新法では、この同意の有無の前提条件がなくなり、教員による児童生徒への性交やわいせつ行為を全て「児童生徒性暴力」として禁止することで、「同意があれば性行為は性暴力として認められない」としてきたような、教員と児童生徒との関係における、言わば公序良俗に反する不道徳性の問題も、今後は問わずして問答無用――ということになる。

免許再交付を原則認めない

 ただし、課題は残る。
 この新法の「教員による性暴力防止法」では、免許が失効した元教員の3年経過後の再交付申請において、教委に拒否権が与えられ、原則再交付を受理しない。先の記事によると、《再交付が受けられるのは、更生状況などから適当と認められる場合に限るとした》とある。適当かどうかを判断するのは、都道府県教委が専門家などを入れて設置する「教員免許再授与審査会」であり、ここで更生の状況を検討することになる。
 つまり、原則は再交付を認めない形となるが、「更生状況が適当である」と判断した場合に限り、再交付が認められることになる。では、この時の「更生状況」の適当性の判断は、どのような物差し=基準によって決まるのだろうか。免許が失効した後の、学校現場から離れた元教員の「更生状況」は、何をもって判断されるのか。都道府県教委の各々の審査会の判断に任せた場合、都道府県教委によってその物差しが変わってしまうことにならないか。
 
 6月4日の閣議後会見で萩生田光一文部科学相は、再交付の際の適否については、それを判断する統一的な基準を設ける考えがあることを示した。「同じ基準でスクリーニングができる仕組みを作ることが混乱を防ぐことになる。制度設計は自治体と連携しながら作り上げたい」と述べている。

〈了〉 

2021年5月29日付朝日新聞朝刊「教員の性暴力防止法 成立」

「教員による性暴力防止法」の要旨

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