男子高校生のための
コンドーム会議
仲間と一緒に「コンドーム会議」を開き
コンドームの装着法をマスターしよう!
セックスと避妊に関する基礎知識
セックスは、愛し合う二人が最高のしあわせ感と快楽を得るための行為。なのに避妊していなければ、妊娠してしまうのは当然のこと。「望まない妊娠」を回避するための避妊の方法を知っておくことが、10代の若者の基本的なステータスであり、矜恃である。
セックスをすれば妊娠する
セックス(SEX)という言葉は、生物学的な男女・雌雄の「性」を指す意と、ペニスを膣に挿入して性行為をおこなうこと、「性交」のことを指す意とがある。ここでは後者の意の「性交」のことを指す。
セックスには、2つのテーマがある。一つは、愛し合う者同士が肉体的または心理的な快楽を求めようとするコミュニケーション・アプローチであること。男性はどちらかというと、単純に肉体的な快楽を求めたがり(愚直に言ってしまえば、男性は女性の膣に自分のペニスを入れたいと思う欲求が強い)、肉体と肉体とが接触する瞬間から、セックスというコミュニケーション・アプローチが始まると思い込んでいるが、女性の快楽はもっと幅があって奥行きがあったりする。
例えばそれは、肉体の接触より以前の、食事の段階からセックスが始まっていると考えていいだろう。つまり、その食事の時点の会話などから、既に心理的な快楽を求めるコミュニケーション・アプローチが始まっているのであり、必ずしも女性が求める快楽というのは、肉体の接触(性的な行為)のみではないということだ。
ちなみに、ほとんどの男性が求めたがる肉体的な快楽の究極は、オーガスム(性交時の絶頂感)のコントロールであり、これを学ぶことも若者にとって大事であるが、ここでは割愛する。
セックスのもう一つのテーマは、生殖――すなわち受精(妊娠)である。これは、子孫を残すための潜在的な本能的行為である。人間は動物である以上、このテーマから逃れて生存することはできない。
射精及び月経のある男女がセックスをする――。射精された精子のいずれか一つが子宮内の卵子と出会い、それが結合して受精卵となり、その受精卵が子宮内膜で着床(受精から着床まで約6日間)すれば、妊娠は成立する。おおよそ妊娠後40週で赤ちゃんが生まれる。
避妊をしないセックスの妊娠率は50%以上
では、共に愛し合ってセックスという快楽はたびたび(あるいは猛烈に)得たいが、妊娠は避けたい――。この人為的に妊娠しないようにすることを避妊という。避妊にはいくつかの方法がある。
しかし、河野産婦人科クリニックが10代の若者を対象におこなった調査によると、避妊をまったくしていないセックスの妊娠率は50%以上であり、「コンドーム」を時々使っていた人の妊娠率は、36%弱である。「膣外射精」をおこなっていた人の妊娠率は26%。転じて、「コンドーム」をいつも使っていた人の妊娠率は10%以下。「ピル」を飲んでいた人の妊娠率はなんと0%である。
このような結果から、避妊の確実な方法としては、男性はセックスの時に必ず「コンドーム」を正しく装着し、女性は「ピル」を毎日(忘れずに)飲むことの併用が、望ましいということが分かる。
「ピル」には性感染症の予防にはまったく効果がない。が、「コンドーム」は性感染症を防ぐことができる。したがって、「コンドーム」と「ピル」の併用こそが、「望まない妊娠」を回避するための大きなメリットということなのだ。
若者達のセックスの実態
以上のことを踏まえ、現状の若者達のセックスの実態について触れておく。
日本の高校生と大学生に、「あなたはセックスをする時、避妊を実行していますか?」というアンケートをおこなった、日本性教育協会の統計結果がある(「青少年の性行動 わが国の中学生・高校生・大学生に関する第8回調査報告」2018年8月)。
この結果を見ると、「いつもしている」を選択した人は高校生の男子で約7割、女子は6割近くで、大学生の男子も女子も7割を超える。この統計の数字をどうとらえるべきだろうか。
実はさらに見ていくと、避妊はいつもではないが場合によってはするという人、すなわち選択肢の「場合による」を選んだ人が、高校生の男子で3割弱、女子で4割弱、大学生の男子と女子も2割ほどいて、セックスの時に必ずしも避妊をしていない若者が少なくない。
この実態を真正面から推察すると、こういうことになる。およそ高校生で3割、大学生の2割の人たちは――私たちは真剣に愛し合っているのだから、場合によっては妊娠しても構わないのだ。二人の愛の結晶の、子どもが欲しいのだ――。?? いや、本当にそうなのだろうか。
ところが、そうではないことが別の質問で分かってくる。場合によってしか避妊をしなかった彼らの、避妊を実行しなかった理由を選択肢の中から選んで回答するアンケートの統計結果を見ると、「準備していないことが多いから」を選んだ人が、高校生及び大学生の男女とも最も多いことが分かった。
次いで多いのが「たぶん妊娠しないと思うから」と「めんどうくさいから」。彼らは「妊娠しても構わない」と思っていたのではなく、場当たり的なセックスの快楽を求めるあまり、避妊の準備もないまま、その場の勢いで性的行為に突っ走っていたことになる。
避妊が不適当かつ不十分な場合の妊娠率については、上述したとおりであるから、その後の二人のあいだに起こるであろう「望まない妊娠」の結果の諸問題の解決は、10代であればなおさら、当人だけでやり過ごせるものではないことは、充分理解できるはずである。
まとめ
・セックスはお互いが快楽を求め合う性的行為
・セックスは生殖活動そのもの
・避妊をしないと、50%は妊娠する
・若者は避妊の知識に疎く、面倒くさがって避妊をしたがらない
・避妊を怠った快楽のみのセックスは、「望まない妊娠」という悲劇を生む