の話。
寝た子を起こせ。これは一生に関わる大事なことなんだから。

奈良林祥先生のセックス講義

セックスオーガズム

愛あるセックスのための正しい知識を学ぼう
 

性とはなにか―性の基礎知識 

2.男の性

 

精子の生産過剰と性的衝動の関係

 男子の睾丸(精巣)からは、男性ホルモン精子がつくられる。男性ホルモンは生まれたその時から睾丸でつくり始められている。精子は、小学校に入る年齢に達した頃から、つくられ始める。つくられた精子は、精嚢(せいのう)という精子の貯蔵所にたくわえられ、1ヵ月くらいで死んでしまう。成長にともない精子の生産が高まれば、貯蔵所である精嚢精子でいっぱいになる。
 精子がいっぱいになったとしても、それをつくり続けることはやめず、一生死ぬまで精子はつくられる。精嚢精子がいっぱいで生産過剰となった時、精子は捨てられることになる。過剰に生産された精子は、体外に排泄されることになる。それが射精だ。
 射精を経験した男の子は、その瞬間から性的感覚なるものを覚える。からだの中から湧き上がってくるものであり、男子であれば誰であっても、これを快い性的感覚として覚えるのだ。
 
 いったん射精によって精子が体外に排泄されても、そのうちまた、「精子の生産過剰」の時が来る。個人差はあるが、若い男性の場合、22時間に1回くらいの割合で「精子の生産過剰」状態が生ずると考えられている。こうしたことで男性は、精子を“排泄したい”という欲望をその都度感じ、一般的には異性への関心が生じて、性的衝動に駆られる。また大脳の働きによって、心理作用としても男性のこのような性衝動は起こるのだ。
 
 過剰に生産された精子排泄の仕方(手段)は、夢精遺精自慰の3つである。この3つのいずれかによって、その都度過剰に生産された精子排泄される。まだ自慰を経験していない小学生では、夢精遺精排泄されることが多い。自慰は自分の手指で性器を刺激し、射精を起こして性的快感を味わう行為であり、やり過ぎが問題になることはなく、“頭が悪くなる”といった説の医学的根拠はまったくない。夢精遺精と比べて自慰が“悪い方法である”と思うのは間違いであり、どの方法が良いとか悪いはない。 

自慰について

 むしろ、自慰は、男子が健全な人間形成を果たすために欠くことのできない必須科目である。自慰の経験無しで成人を迎えた場合の弊害の方が、圧倒的に多く問題である。
 “自慰は不潔だからやらない”、といった間違った理由で一度も自慰を経験せず、結婚に到った男性のほとんどが、射精不能勃起不全といった性交障害に陥るという。性欲は人間の本能だが、「性欲をどうコントロールしていくか」という部分は、本能の領域ではない。社会生活もしくは個人生活の中での様々な体験を通じ、省みながら身につけるものであり、人間形成の上で必要なプロセスである。 

男の性のめざめの過程

 自慰については、子どものうちに射精をコントロールし、そのやり方を覚えることはとても大切なことで、この時期の訓練を怠ると、将来、射精不能勃起不全といった、性生活においてとても悩ましい問題が生じてしまうのである。
 したがって自慰というのは、常日頃から性生活すなわち「セックスのための準備体操」であるという考え方が望ましい。特に成長期においては、勉強やスポーツと同等に、「自慰は男子の必須科目である」と思っていた方がよい。 
 そして自慰は、単に過剰に生産された精子の処理や「セックスのための準備体操」というだけではなく、親からの精神的離乳という不可欠な自立的行為でもあって、思春期に差し掛かる頃の、生活習慣にともなった「プライヴェートな領域」で自我と自尊心を育む大事な営みでもあるのだ。小学校高学年になれば、親であっても子の「プライヴェートな領域」には安易に踏み込まないモラルや節度が必要であり、それが守られなければ、子の自我形成はじゅうぶんには満たされず、親に対する不信感から他人への不信感へと増幅し、人間形成に大きな課題点が生じることになってしまうのである。
 
 思春期以降の男子のからだでは、周期的に「精子の生産過剰」状態が生じる。そうした時、男の性というのは、自らその過剰生産された精子排泄したい衝動に駆られる。性欲である。例えば、好きな人に近づきたくなり、好きな人が美しく見えるようにもなる。場合によっては、その好きな人のために“死んでもいい”と思えたりすることもある。が、これらは「精子の生産過剰」のせいだったりするのだ。

〈了〉