奈良林祥先生のセックス講義
セックスとオーガズム
愛あるセックスのための正しい知識を学ぼう
性生活の実際―セックスの実践
5.性交の4つの段階とオーガズム
性交の4つの段階
おおむね性交は図表に示したように、4つの段階を経て始まり、終わる。
①性興奮開始期
②性興奮持続期(プラトー期)
③性興奮絶頂期(オーガズム期)
④性興奮消退期
①の性興奮開始期と②の性興奮持続期の半ばまでが「前戯段階」にあたり、抱擁、接吻、乳房愛撫、性器刺激、性器接吻などの愛情表現を惜しみなく与え合う段階となる。
こうした行為を「前戯」と表すと、性器結合の前に適当に戯れて遊ぶことと受け取られがちだが、これは大きな考え違いである。「前戯」はFore Playと言い、この“プレイ(遊び)”は余興、おまけという意味ではなく、生活の一部分としての遊びと考えるのが常識。したがって「前戯段階」は、性交前の単なるおまけという位置づけではなく、性器結合に到る重要なプロセスだととらえなければならない。
性反応曲線の男女の差
男女それぞれの性反応の経過を図で示した。2つの曲線は全体の流れとして同じようであるが、細かい点で男女に差があることが分かる。
男性(イ)の性反応というのは、男であればほとんど誰であってもこのような経過をたどる。唯一変化があるとすれば、(1)と(2)、すなわち性興奮開始期とプラトー期をどれだけ長く持つか、あるいは短くしかもたないかの差がある程度のものだ。
女性の性反応は男性のそれと比較して、もっと複雑である。性興奮開始期においては、男性のそれよりもずっと緩やかで、時間をかけてプラトー期に移行する場合もあれば、男性とほとんど変わらないスピードで性興奮を高める場合もある。あるいは途中で一休みした形で、2段階3段階で性興奮を高めていく場合もある。
プラトー期においては、男性のように平坦に続く場合もあるが、プラトー期の間に既にオーガズムに近い状態にまで数度繰り返す場合もあり、多彩というか多様である。女性は1回の性交の中で、複数回オーガズムを味わうことができる、というのが、女性の性反応の大きな特徴であり、このことを男性はよく理解しておくべきである。
男性は1回の性交の中で、たった1度のオーガズム(射精)しか味わうことができない点で、その違いは歴然である。男性は射精後、性反応空白期となり、まったく性欲を欠いた状態となる。あれほど強烈な性興奮を表していた同じ人物とは思えないくらいに性欲に対して無反応となる。
男性の性反応空白期の時間は、少なくとも30分前後であるとされる。若い人ほどこれが短く、年長になればなるほど長くなってしまう。しかし、この無反応の期間を過ぎれば、再び男は性的興奮を覚え、性器が勃起し、性反応能力を取り戻す。
オーガズムとは
オーガズム(orgasm、オルガスムス)とは、生理学的にみると、「精神的、あるいは肉体的に与えられた性的刺激によって、極限に達した血管の充血と、筋肉の緊張が、ついに耐えきれず、一挙に解放された虚脱に近い状況に至る」ということである。日本語ではこれを、絶頂感だとか極致感と訳すのが一般であるが、厳密に言えば、これは誤りであり、「絶頂の直後に起こる虚脱状況」こそが、本来のオーガズムを指す。それは張り詰めていた血管や筋肉がいっぺんに力抜けしてしまう瞬間のことである。
あまりに突然、からだじゅうの緊張が緩みきってしまうという変化が起きるため、からだの方がそれについてゆけず、つい取り乱してしまうことの一例が、耳の中にある三半規管という平衡をつかさどる器官の、一瞬の失調状態である。オーガズムに達すると、人の平衡感覚は狂い、まるで無重力の世界に放り出されたような気持ちになる。
この無重力に似たふわふわした状態のことを、フライング・センセーション(飛行感)とか、フローティング・センセーション(浮遊感)と呼ぶが、オーガズムにおける快感の中心をなすのは、この感覚に身を委ねた時の快さである。すなわち、性交における満足とは、二人が同時に、この無重力に似た浮遊感に包まれきれたことを指す、と考えればいい。オーガズムに達すると、二人は興奮消退期に入り、性興奮はみるみる冷めていくが、とりわけ、男性の冷め方は女性よりも早いことになっている。