奈良林祥先生のセックス講義
セックスとオーガズム
愛あるセックスのための正しい知識を学ぼう
性生活の実際―セックスの実践
7.腟の感情表現と性交体位について
腟のゆたかな感情表現を引き出そう
オーガズムというのは、喜びの極まる時として、人類史のはじまりから途切れることなく探求され続けてきたことであろう。中にはどうも、オーガズムの時に快くなるのはそうなのだけれど、嬉しくなるということがない、という女性がいたりする。一方では、オーガズムの度に失神せんとばかりに全身でそれを表して感極まる女性もいる。なぜ同じオーガズムでありながら、こうもさまざまな違った反応を女性に起こさせるのだろうか。
一言で言うと、性格の差だと考えられる。感情をからだ全体で表すことに、普段から慣れている人と、感情をなるべく表に出さないよう控えめに育った人の差、ということになる。感情の表現が日頃から豊かで自由である人は、性興奮の高まりの伴う快感の発生を、からだ全体で嬉しさとして表す。結果的には、泣くからより悲しさが増す、のと同じ理屈で、ますます快感が強烈なものに感じられるようになる、ということ。感情表現が豊かな人は、性交の経過の中で、快感に関して自分を自己暗示にかけることができるのだ、ということも言える。
逆に、普段からあまり感情を表に出さない人が、性交の時だけ感情を豊かに振る舞うということはできないのだから、快感はとおりいっぺんの快感としか感じられないで終わってしまう、ということになる。したがって、性交に伴う喜びを、本当に満ち足りたものとして味わいたいと思うのであれば、普段から感情の表現を自由に、そして情緒性豊かな生活を心がけるのが望ましい。当然、喜びをからだで表現するには、それなりに筋肉が働かなければ無理だから、美容体操などを通じて顔の筋肉やからだの筋肉をほぐしておくことが必要だ。これもまた性生活における調和を生み出すための、隠れた努力ということでもある。
からだの表現を豊かにするという意味で言うと、腟もまたからだの一部であって、表情があるのだ、ということが言える。腟にも喜びを喜びとして表現する能力があり、主張の権利があるのだ。
腟を構成する筋肉は随意筋といい、人の意志の力で操作できる筋肉である。ただし普段の生活では、腟の筋肉を使って感情を表現する必要に迫られないので、意外に腹の筋肉で感情を表すことが上手ではないことは事実である。しかし、嬉しさをからだ全体で表すことによって、性の調和ある喜びがより強められるのであれば、当然腟の筋肉に表情をもたせることを覚えるべきなのだ。
腟の表情といっても、喜びを収縮で表すことくらいしかないが、腟の筋肉を自由に収縮させることができれば、結果的には腟内に挿入された男性性器を、強く締め付けることができ、それだけで性器の一体感が強まり、心理的にも喜びの度合いを高めることに役立つのだ。ではどうすれば、腟の表情をより豊かにすることができるか。
①腟の入口付近の筋肉の収縮訓練
硬い大便をする時、最後に肛門をしめる感じを思い出してもらいたい。実は、肛門をしめて閉じることをやると、同時に腟の入口付近の筋肉も収縮しているものなのだ。朝、夕、20回くらいずつ、肛門の筋肉をぐっと収縮させる運動をする。これが腟の筋肉の収縮運動の訓練となる。これをやると、腟の入口付近の筋肉の収縮力を非常に強くすることができる。短期間で効果を上げることができる訓練なので、実践してみて欲しい。
②腟の奥の筋肉の収縮訓練
美容体操用のゴムチューブを1本用意し、チューブを二重にして、膝のあたりに巻く。尻を床に付け、膝を立てた姿勢で、チューブの力に逆らい、できるだけ膝を左右に開く運動をする。これも朝、夕、20回ずつ繰り返す。
次に、同じ姿勢のままチューブを外し、膝と膝の間に適当な厚さのクッションを挟み、膝と膝をできるだけ近づける運動をする。これも朝、夕、20回ずつ。
このような簡単な運動を毎日続けることによって、腟は嘘のように豊かな表情をもつようになる。産後はどうしても腟壁がどうしてもある程度弛緩するので、それを元の弾力のある腟に戻すためにも、これらの訓練を実践していただきたい。
性交体位について正しく理解する
性交とは、性器を交えることである。性器を交えるためにとる姿勢のことを性交体位という。
性交体位にはそれなりのバリエーションがある。これらは性器の結合の姿勢であっても、全てが必ずしもオーガズムを味わうための姿勢ということではない。一つの性交体位をとれば、それはそのまま男の射精及びオーガズムと、ゆくところまでゆかねばならないと考えるのは間違い。性交体位のうち、いわゆる正常位と呼ばれる姿勢以外のほとんどの体位(騎乗位や前坐位、腹臥位、膝臥位、後坐位など)は、性交をより華麗に仕立て上げ、喜びをより強烈なものに創り上げるためのアクセントに過ぎない。
男の性欲の本質は支配欲であり、女の性欲の本質は服従欲である。その支配したい欲望と、服従しきりたいという願望とが、最も剥き出しにされる場が性交である。オーガズムの瞬間の男と女というのは、支配欲のかたまりと服従欲の権化に還元しきっている二人の状態を指す。つまり、オーガズムのその時は、男はいかにも女を支配しているに相応しい姿であり、女はいかにも男に支配されきってしまっていると実感できる姿が望ましく、それが正常位の型なのである。
概ね、女性は、正常位ではオーガズムに達するが、それ以外の体位では感じないという人が多い。男性でも、正常位以外ではなかなかちょっと、と思う人が多いだろう。心的不安がなく、それぞれの欲望が最も昇華しやすい姿勢というのが、とどのつまり正常位なのであって、このことから正常位がオーガズムに達しやすい性交体位であるという理由が頷けると思う。
ただし、お互いの性欲が満たされる状態(心理的条件を含む)であれば、正常位以外でオーガズムに至ることは何ら不思議なことではなく、また一向に構わないのである。彼らにとって結果的にそれが、最上のオーガズムに至る体位であるということなのだ。
正常位については詳しく後述するが、それ以外の体位は何のためにあるのかといえば、アクセントであり、香辛料のようなものであり、興奮促進剤であり、楽しむためのものである。あくまで性交体位はそのためのダイナミズムであって、今日はこの体位でオーガズムを迎えたいと決め込んでやるべきものではない。ある偶然とられた体位から別の性交体位へ、あくまで流動的に、次々からだを離したり密着させたりしながら移行していく時の、客観的な体勢(型)にバリエーションが複数あるというだけのことだ。
ダイナミズムをもって性交体位を移行していけば、おのずとその途中で女性は1回目のオーガズムに達するであろう。その時男性は、興奮の高まりを抑え、射精を我慢し、愛撫を繰り返しながら次の体位へ移行していく。又はいったん小休止してもいい。
そうして別の体位で2回目の興奮を高め、いずれ最後は正常位に戻るのが好ましい。女性のオーガズムを見計らって、男性はついに射精するか、それとも3回目を待つか…。それはその時の高まりの状態や気分で判断し、最終的には二人の共同作業で組み立てていけばいい。
いずれにせよ、男が前もって、今日はこの体位で射精しようなど頭に描いて決めないことだ。それは、最も退屈な性交(性生活)になりがちであるから。大切なのは、その場のフィーリングであり、相手の興奮の高まりの観察であり洞察であり、お互いの最上のオーガズムの瞬間を求める(見極める)ことである。
性交とは、性器を交えることに相違ないが、お互いが無心に、狂喜乱舞、無我夢中に喜び合うことが目的なのであって、どれだけ性交体位をこなしたか、どんな性交体位をこなしたかなどと競うことは、はっきり言ってなんの得にも喜びにもならないし、どうでもいい話なのである。
3つの正常位の特徴
①対面男性上位~女性が膝を軽く曲げた場合
女性の膝がやんわりと浮いた状態。最もポピュラーな性交体位である。ペニスの方向と腟の方向は必ずしも一致しているわけではない。この時の女性の腟の方向は斜め前下方を指し、男性のペニスの方向は、床にほぼ平行となる。この方向の違いが、性交にまだ不慣れな頃の男性に性器挿入を困難にさせるのだが、挿入されたペニスの亀頭は腟の前壁を撫でるような形となり、結合の度合いは中程度止まりである。
②対面男性上位~女性が足を揃えて伸ばした場合
別名、伸長位とも呼ばれる。女性が足を揃えて伸ばすことにより、男性のペニスが腟及び大腿でしっかりと圧迫される点が特徴。この状態の女性の太腿を、男性が外側から両脚で強く挟むようにすれば、ペニスの受ける刺激すなわち圧迫感はさらに増すことになる。性器の結合度合いは浅いわりに、ペニスの上面によってクリトリスが受ける摩擦がかなり強かったりして、局部的な刺激度は、①よりもかなり上である。
③対面男性上位~女性が股関節と膝関節を強く屈曲した場合
別名、屈曲位。女性があたかも折り畳まれるような感じになる。女性の腟前庭が広く露出される形となるため、性器の結合度はきわめて深い。男性がからだをぐっと前のめり加減にすればするほど、ペニスが垂直に腟の中に突きささるという感じが強く、ペニスの亀頭が腟のいちばん奥に突き出ている子宮の入り口(子宮腟部)に突き当たる感じが、かなりはっきりと知覚できる。