【特別編】奈良林祥の
セクソロジー講義集
さらなる性の知識の泉へ!
勃起のメカニズム
ペニスはどうして太く、大きくなるの?
女性が知りたい男性の性器(ペニス、陰茎)の謎で、いちばん不思議がられるのが、勃起のメカニズムについてだろう。セックスの時、どうしてあんなにペニスは、太い棒のようになったりするのか――。
男性側の感覚でいうと、普段、日常生活では、ペニスはパンツの中で縮んで垂れ下がっていて、用があるとすればおしっこをする時だけ取り出す――ということになるわけだけれど、ある時、ムラムラと焚きつけられた性欲でからだが興奮してくると、たちまちペニスの感覚が鋭敏になって、太い棒のような形に勃起して血管が脈打つ――という状態に。もしあなたが中学生か高校生くらいで、普段は包皮で覆われているペニスだよというのであれば、勃起するとゆるゆるとその包皮は下がってきて、亀頭全体が露出し、小さく萎んでた時のペニスとはまったく形の違う、大人のペニスの様相に…といった経験も、男子ならみんな経験しているはずだ。
女性は大人の男性の、縮んで垂れ下がっているペニスの形状を、あまりご存じないかも知れない。だってそれは、セックスの時のあの太い棒のようなペニスの形しか見る機会なんてないから――という人は案外、多くいるのではないかと思う。
しかしながら、女性はもちろんのこと、男性でも、ペニスが勃起して太くなる生理現象は感覚的に経験上熟知しているものの、そのメカニズムについてまでは、あまり詳しく知らないのではないだろうか。
その勃起のメカニズムの謎を平易に解説している、奈良林祥著『HOW TO SEX 性についての方法』(KKベストセラーズ)の「魔法のタネ明かし=スポンジようの三本柱でできている」を、ここではさらに分かりやすく要約して解説してみたい。掲載した画像「陰茎断面図と勃起の反射路線」の図解は、その本にあった3点の解剖図(イラスト)をあらためて再構成し、私が自ら作成したものである。
ペニスは三本の柱でできている?
ペニスは、三本の矢ならぬ三本の柱の集合体である。そのうちの一本は尿道海綿体といい、他の二本を陰茎海綿体という。海綿体というのは、スポンジ(=海綿状)の組織になっていて空間がたくさんあるので、普段のペニスはマシュマロのようにやわらかい。
ここに、何らかの性的刺激が加えられると、勃起する。性的刺激というのは2つあって、一つは脳に加えられた空想によるものであったり視覚によるもの。もう一つは、ペニスに直接加えられた触覚的な刺激。前者の大脳が受けた刺激は、脊髄(せきずい)を下がり、その一番下の仙髄(せんずい)にある勃起中枢に刺激の信号を送る。信号を受けた勃起中枢は、三本の海綿体に血がたまるようペニスに命令する。
そうするとペニスは即座に反応して、血液で膨らもうとする。ペニスを包んでいる皮膚はある程度以上には伸びないので、勢い余ってペニスは、勃起という形をとるようになる。それ自体がまたペニスにとっての刺激となる。刺激を受けたペニスは、その刺激の信号を仙髄の第三分節に伝え、信号を受け取った第三分節は、すぐ反射的にペニスに命令し、さらにペニスは血液で充満する。かくのごとくペニスは、その硬さと勃起の雄々しさがますます強められていく、という仕組み。
これと同時に、ペニスの勃起で生じた刺激と、外部から加えられたペニスへの愛撫の刺激は、ペニスから腰髄(ようずい)へ、腰髄から脊髄へと上がり、大脳にまでいたって大脳を興奮させ、興奮した大脳はさらにそれを刺激の要素として、また脊髄に下達する、ということが反復的におこなわれる。
大脳を性的刺激に集中させよ
ペニスが勃起する仕組みには、大脳がかなり強力に参画していることがこれで分かるだろう。勃起中枢は腰髄と仙髄にあって、勃起の現象そのものは腰髄と仙髄、そしてペニスとの間の反射という単純な生理反応で起こされるものなのだが、ここに大脳の働きが絡んでおり、やや複雑である。
男性では幾度も経験していると思われるが、起こると思っていた勃起が起きなかったり、勃起していた状態がある瞬間、なにかしらの集中力を欠いたことでペニスが次第に萎んでいく、という現象はつまり、大脳にマイナスの刺激として働き、勃起中枢に刺激の信号を送るのをやめた、ことによるものなのだ。マイナスの刺激がなくなれば、再び大脳は性的刺激が加わるとその信号を送り始める。
【講義のポイント】
- 勃起のメカニズムには、大脳の役割が大きく絡んでいる
- 勃起を続けるためには、大脳に余計なマイナス刺激を与えないよう、深々とした性的刺激が必要