の話。
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遅れた性教育を取り戻そう―都教委の調査結果を読み解く

2018年9月17日

「性交」を教える学校が少なすぎという問題

 日本、性教育足りてませんよ、の自覚を持とう。うがった見方をすれば、その自覚のあらわれが表面化してきた好例ではないか、ということをニュースから読み解く。今回は短めに。
 
 今月14日付の朝日新聞朝刊の社会面で、「性教育『指導要領外も必要』半数」という記事が掲載された。記事の内容を要約すると、東京都教育委員会が8月に実施した中学校の性教育に関する調査で、都内624校の公立中学校の校長を対象に調査した結果、42%の校長が「学習指導要領に示されていない内容を指導することも必要だと思う」の項目に「そう思う」と答えたという。
《性教育をめぐっては、足立区立中学で今年3月、性交や避妊など中学の学習指導要領にない内容を授業で指導。自民党の都議が問題視し、都教委が区教委を指導したが、「10代の性の現実に見合っていない」と疑問視する声も出ていた》
《学習指導要領を超えた性教育について、都教委は、保護者の理解と了解を得られた生徒に限り、授業を実施できる、との立場だ。担当者は「調査結果を分析し、(性教育の)手引の改訂を検討していきたい」としている》

(2018年9月14日付朝日新聞朝刊より引用)

 
 この都教委の調査では、全624校のうち、9%の55校が、避妊法などの学習指導要領に示されていない内容を授業で指導している、もしくはする予定であると回答。55校のうち、27校は避妊法、11校は「人工妊娠中絶」、5校がコンドームの利用、3校が「性交」について指導していたという。
 この結果だけを見れば、実際に学習指導要領を超えた授業をおこなった、あるいはおこなおうとしている中学校は1割程度で、半数近くの中学校の校長が「学習指導要領に示されていない内容を指導することも必要」と思っているにもかかわらず、授業では実践していない、もしくは実践できない、状況ということになる。
 記事にもあったように、今年の3月、都教委から「不適切」と指摘された足立区立中学の性教育の授業では、「性交」「避妊」「人工妊娠中絶」という学習指導要領に示されていない言葉を使ったとして問題視された。これに対し、不当な介入だとして教職員や医療関係者らが抗議の声明を発表したのが4月。事の経緯は、当ホームページの「新聞記事が伝えた性教育の『性交』不適切問題」を読んでいただきたい。
 
 こうした背景があり、都教委は公立中学校に対して調査を実施したわけだが、やはり、現実問題として、「性交」「避妊」を教えることになっていない学習指導要領のままでは、子どもらが自らの性の問題と向き合えないのではないか、と危惧する学校側の苦悩が、結果に表れていると言えるだろう。
 この問題提起に鑑み、全国の公立校の性教育の実態・現場としては、いったいどうなっているのか、というところに私は関心が移ろいでしまう。想像すると、少し恐ろしい。都教委では調査の結果を踏まえ、「性教育の手引」の改訂を検討しているとしている。では、それぞれの県教委ではこの問題をどうとらえ、どのような方針を示すのだろうか。今後の成り行きを見守りたい。

「性交」や「避妊」を教えなくていい、わけがない

 この問題のいちばんまどろっこしいのは、そもそも「性交」「避妊」「人工妊娠中絶」も、さらにいえばコンドームの使い方も、知識として男女とも絶対に知っておかなければならないのだから、何故それが中学生という年代で教えることが好ましくないのか、ということなのである。学習指導要領が躊躇している理由が私にはよく分からない。
 子どもたちがやがて大人になり、自覚を持ってこの地球上で生きるのに必要な事柄を、特に人の命を、人間とは何かを、満遍なく子どもに教えるのが、公教育の基本精神であろう。その最も根源的な、性の事柄を曖昧に躊躇して教えないのであれば、それは教育として大いに不足している、いや、たいへん問題であるとしか言えない。子どもの思考能力が充分に具わってくる時期に、からだが成長して大人になりつつある時期に、性の事柄をしっかりと教えず疎かにしてしまっている日本の公教育の在り方は、先進国として恥ずべき振る舞いである。
 
 あなたの知っている子どもたちの彼や彼女が、いつまでも子どものままでいると思っていたら大間違い。数年後、もうあっという間に精神も肉体も立派な大人になる。これはまったくもって当たり前のことなのだけれど、その当たり前の現実に、日本の性教育が沿っていない。彼らは、あっという間にオッサンになる。オバサンになる。躊躇している暇なんてない。
 性教育、全然足りてないから遅れを取り戻そう。教えてないから未熟なままになる。未熟な大人が増え、性被害が広がってしまう。この実際的な悪循環を取り除こう。根絶しよう。性教育の改善は日本における喫緊の課題である。と、私は思っている。

〈了〉

9月14日付朝日新聞朝刊の記事

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