LGBTのラジオ番組「Knock on the Rainbow」
LGBT(Lesbian,Gay,Bisexual,Trancegender)が主役の面白いラジオ番組がある。札幌のSTVラジオの「Knock on the Rainbow」(https://www.stv.jp/radio/rainbow/index.html)。パーソナリティーのケンタさんと中村笑野さんによる、毎週土曜の21時半から22時の30分枠。二人の軽快で柔らかいトークが魅力的で、時折、ケンタさんが毒舌を放つのも面白い。マイノリティの人達に向けられた様々な分野の情報共有、聴取者からのメッセージ、音楽、イベント情報などを詰め込んだ、ポップで朗らかなラジオ番組――といった感じで好印象だ。
ネットでも聴ける「Knock on the Rainbow」
私がこの番組を知ったのは、8月28日付の朝日新聞朝刊の小さなコラム「ラジオアングル」である。「性的少数者の声を聞く」と題されて、STVラジオの「Knock on the Rainbow」が紹介されていた。ちなみに、パーソナリティーのケンタさんは、ゲイだという。
個人的に“ラジオ”と聞いて思い出すのは、90年代中頃のインターネット黎明期、世界のラジオ番組が聴けるようになる――ということを知って、有頂天になったこと。それまでラジオというのは、AMにしてもFMにしても、電波の届く範囲の放送局しか聴けないのが常識であった。それが、インターネットという高速通信網の画期的な繁栄によって、世界は一変した。様々なメディアがインタラクティヴな環境に進歩を遂げ、そのうちの一つのメディアであるラジオも、世界中の放送局が自宅で聴ける時代となったのだ。私は、2000年代初め頃、とにかくインターネットを利用して、アメリカの放送局のジャズやヒップホップ系のラジオ番組を貪り聴いていたのを思い出す。
今、スマートフォンでは、ラジコ(http://radiko.jp/)という便利なアプリがある。利用者は非常に多い。放送エリア内なら無料で聴取できるが、エリア外はプレミアム会員(有料)になることで、全国のラジオ局が聴けるようになる(2019年の時点でなんと90局以上)。また、タイムフリーというサービスを利用すれば、過去1週間以内に放送された番組も聴取することができる。ラジコはとても便利で有益なアプリである。普段私はラジコで、エリア内のラジオ局の番組を聴いていたのだけれど、今回、この札幌のSTVラジオの「Knock on the Rainbow」を聴くために、とうとうプレミアム会員になってしまった。だからこれからは、定期的にこの番組を聴けるようになったのだ。
80年代アイドルの音楽が懐かしい
「Knock on the Rainbow」初逢瀬の8月24日の放送回では、新田恵利さんの「不思議な手品のように」の曲が流れて、少々面食らった。そういえばケンタさんは、1976年生まれである。すると私より4歳年下。ほとんど同世代と言っていい。そうか、80年代のおニャン子クラブの人気番組「夕やけニャンニャン」をじっくり観ていた世代なのだな、と合点する。6月生まれの双子座。血液型はB型――。これまた私と同じ。何やらケンタさんに親近感が湧いてくるではないか。
番組では、ゲイ関連の公開映画も紹介された。ドメ・カルコスキ監督の『トム・オブ・フィンランド』。ルイス・オルテガ監督の『永遠に僕のもの』。デクスター・フレッチャー監督の『ロケットマン』(これはエルトン・ジョンのサクセスを描いた作品!)。瑠東東一郎監督の『劇場版 おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~」といった4作。公開されるLGBTの映画が多いのも、時代をよく反映していることが分かる。
ところでLGBTと言えば、性的少数者の人達が気兼ねなく利用できる美容室の話題で盛り上がっていたのが印象的だった。トランスジェンダー(性別違和)の人達が、好みのヘアースタイルを安心して頼める美容室を見つけるのに、なかなか苦慮している、困っている現状があるということを、私は初めて認識した。想像すらしていなかったことだった。しかし、だんだんとそうした性的少数者の人達が打ち解けやすい美容室が増えてきているらしいのだ。まったく、目から鱗が落ちる話であった。
8月31日の放送回では、9月15日に札幌でおこなわれる、「さっぽろレインボープライド2019」(https://www.sprrainbowpride.com/)のパレードの告知があった。また、この回の音楽は、斉藤由貴さんの「悲しみよこんにちは」、ボズ・スキャッグス(Boz Scaggs)の「We're All Alone」。別段、LGBTでなくとも面白くて嵌まってしまうラジオ番組、それが「Knock on the Rainbow」である。