男に異存はない。包茎の話。

女性が自分の意思で避妊法を選ぶということ

2019年10月5日

「リプロダクティブ・ライツ」ってなに?

 まず、「リプロダクティブ・ライツ」(Reproductive Rights)という言葉をここでは覚えておく必要がある。「リプロダクティブ・ライツ」とは、「生と生殖に関する権利」のことで、リプロダクティブ・ヘルスと併せ、「性と生殖に関する健康と権利」の概念を指す。「リプロダクティブ・ライツ」について、私が読んだその新聞記事の解説欄には、こう記されていた。
《すべての個人やカップルが、子どもを持つか持たないか、いつ持つか、何人持つかを自己決定でき、そのための情報や手段を得ることができるという権利。1994年の国際人口・開発会議で提唱され、国際的に承認された》
 
 「リプロダクティブ・ライツ」及びリプロダクティブ・ヘルスについて詳しく知ろうと、私は公益財団法人ジョイセフ(JOICFP/女性のいのちと健康を守るために活動している国際協力NGO)のサイトにアクセスしてみた。リプロダクティブ・ヘルス《性や子どもを産むことに関わるすべてにおいて、身体的にも精神的にも社会的にも良好な状態であること》とあり、「リプロダクティブ・ライツ」《自分の意思が尊重され、自分の身体に関することを自分自身で決められる権利のこと》とあった。さらにこの2つの概念には、以下のことが含まれる、とある。
 
《すべての個人とカップルが、子どもを産むか産まないか、産むならいつ産むか、何人産むかを自分自身で決めることができること。安全に安心して妊娠・出産ができること。子どもにとって最適な養育ができること。他人の権利を尊重しつつ安全で満足のいく性生活をもてること。ジェンダーに基づく暴力、児童婚、強制婚や、女性性器切除(FGM)などの有害な行為によって傷つけられないこと。強要を受けることなくセクシュアリティを表現できること。誰もが妊娠・出産、家族計画、性感染症、不妊、疾病の予防・診断・治療などの必要なサービスを必要な時に受けられること》

(公益財団法人ジョイセフ「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR:性と生殖に関する健康と権利)とは」より引用)

 
 今回のテーマに関しては、《誰もが妊娠・出産、家族計画、性感染症、不妊、疾病の予防・診断・治療などの必要なサービスを必要な時に受けられること》の文言に絡んでくる問題であり、こうした権利が国際的に承認され、25年以上が経過しているにもかかわらず、我が国日本では、女性が避妊する自己決定権の選択肢(すなわちその避妊の手段)が、あまりにも少ない――という話を進めていきたい。
 

避妊はコンドームしか知らない日本

 「#なんでないのプロジェクト」代表の福田和子さんはこの点について警鐘を鳴らし、避妊の選択肢を増やす活動をしている。2019年9月23日付朝日新聞朝刊に「妊娠出産の自己決定権 遅れる日本」という見出しの記事が掲載された。私はこれを読んで、女性の意思で使える避妊法が、日本ではあまりにも少ないのだという現実を知ったのである。
 
 その新聞記事の内容を読み取っていく。
 避妊に失敗した際に服用する緊急避妊薬について、掲載されていた「緊急避妊を必要とした理由」の調査結果(「#なんでないのプロジェクト」調べ)を見ると、その理由で最も多いのが、「コンドーム失敗」(78.5%)だそうだ。次に多いのが、「膣外射精」で36%。その次が「避妊なし」で31.5%。この調査に回答した女性の約3割が、緊急避妊薬を服用した経験があるという。男性が避妊の際に装着するコンドームについて、その「コンドーム失敗」の具体的な失敗例に関しては、この記事では触れられていなかったが、おそらくコンドームの使用法が正しく把握できていなかった可能性が高いと思われる。
 
 言うまでもなく、こうした記事の内容を、男の側で読み取っていく必要がある。分かってくるのは、何もしなければ、女性の側のリスクが非常に大きいということだ。言い方を変えると、男性が女性に対し、その重いリスクを背負わせている――ということである。
 日本の学校教育では、まだまだ、セックス避妊法性感染症についての保健指導が充分ではない。男性が自ら覚えなければならないはずのコンドームの装着の仕方を、学校ではほとんど何も学べていないのである。それは、正しい装着の仕方をただ教えるというだけではなくて、現物を見せながら、具体的に、こういう付け方をしたら、失敗する率が高くなりますよ、といったことも教えないとダメなのだろう。現状をみると、保護者が、あるいは女子生徒が団結して学校に対し、男子生徒にコンドームの装着法を具体的に教えるよう訴える必要がありそうだ。
 
 10代の若い男子は、そもそもコンドームなんていうものを付けたがらない、と聞いたことがある。私自身の経験からして、10代の若い男子というのは、概ね、精神的にまだ未熟である(未熟なままでいたいというある種の願望か?)。日常、“若気の至り”の言動が少なくない、とも言える。
 それでいてコンドームの正しい装着法の教育実習が不十分で、結果的に避妊の失敗率が高くなりがちになることを見越してかどうかは知らないが、諸外国では、避妊そのものだけをみると、あまりコンドームに頼っていない。逆に日本では、バカみたいにコンドームに頼り切ってしまっている。
 諸外国では当たり前のように、女性が服用する「低用量ピル」避妊法の方が、ポピュラーなようである(「15〜49歳の女性の避妊法」グラフ参照)。ただし断っておくけれど、性感染症の予防にはコンドームの装着が絶対に必要である。
 

日本ではピルの有効性が認知されていない?

 日本人の女性が「低用量ピル」をほとんど服用していない理由は、いくつかあるのだろう。その理由の一つ、これもまた、学校の保健指導が不十分で、避妊についての知識が足りないということ。それから、「低用量ピル」を服用するには、医師の処方が必要だということ。これは10代の若い女性において、抵抗感が強いと思われる。
 病院へ、しかも婦人科に行くということになれば、家族に知られるのはほぼ確実であり、そのまっとうな理由を保護者に説明するのも憂鬱であるし億劫だ。しかもピルの価格が、諸外国に比べ、日本は高いそうで、1ヶ月2〜3千円だそうである。
 例えば10代の若い女子が、保護者に「私これから婦人科へ行くの。カレシとセックスするから、低用量ピルをもらおうと思って。私のカレシ、コンドーム付けたがらないし、付けても失敗しそうだから」と説明するのはさすがに辛い。いや、10代でなくても、若い女性が保護者に何かしらそういう説明をするのは嫌なものだろう。いや、無理だ。できればこっそりと済ませたいものだろうが…。
 日本では子どもも大人も、避妊に対するリテラシーがあまりにも低すぎるのである。保護者ならば、自分の子にそう言われて、いちいち驚いている場合ではないのだ。何も言わず、優しく付いて行ってあげなさい――ということ。
 
 ところで以前(「お薦めしたい2つの性教育本」参照)、このサイトで紹介した性に関する本、河野美代子著『新版 SEX & our BODY 10代の性とからだの常識』(NHK出版)には、避妊法について実に分かりやすく詳しく記されていて頼もしい。その内容を以下、要約しておく。ちなみに、その本の、避妊に関するページの見出しは、《どこまですれば完璧な避妊といえるの?/「避妊の意味」 男の子は女の子のからだのことを考えて。妊娠は女の子だけにおこる現象だから》である。
 

  • セックスの意味は、妊娠するためのものと愛情を分かち合うためのもの
  • 避妊がいつから必要になるかは、人それぞれ
  • 避妊にはいろいろな方法があるが、そのうちの2つは、卵子をつくらないようにするもの→「低用量ピル」、精子と卵子が出会わないようにするもの→「コンドーム」、「ペッサリー」、「殺精子剤」、「卵管結紮法」など
  • セックスをする前にお互い妊娠について考え、避妊法についてよく話し合うこと
  • コンドームは正しく使えば90%以上は妊娠を防げる
  • 女の子が主体的に確実に妊娠を防ぐことができる方法→「低用量ピル」(経口避妊薬)
  • ピルは正しくのめば、99.9%妊娠を防ぐことができる
  • 性感染症を防ぐには、コンドームが必要
  • 100%の避妊法はない

 

恥ずかしがらずにセックスを語り合おう

 以上。日本において将来、「リプロダクティブ・ライツ」の観点で、女性が自分の意思で避妊の方法をいくつかの選択肢から選ぶことができるようにするためには、まず「低用量ピル」の入手にかかわる高いハードルを、もっと低くする必要がある。
 と同時に、何より、避妊についてのリテラシーを、一般的に高めていく努力も必要。例えば若い人達は、頻度を上げて友達同士でについて語り合い、セックス避妊についても知識を高めていけばいい。を語ることは決して恥ずかしいことではない。何も知らなければ、もっとたいへんなことになるのだから――。
 ポジティヴな思考でをとらえていくことが大事。その上で、女性が自分の意思でできる避妊の選択肢がもっと増えるよう、改善を促す活発な活動を促したい。努力次第で日本の現状も変わるのだ。「#なんでないのプロジェクト」福田和子代表は、避妊に関して、安心して相談できる場所が日本で増えてほしい、と望んでいる。

〈了〉

2019年9月23日付朝日新聞朝刊

河野美代子著『新版 SEX & our BODY 10代の性とからだの常識』

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