男子のオナニー改革論
オナニーの古い因習を捨て、
新しい現代のスローなオナニーの快楽をめざそう
不適切なオナニーが健全な勃起と射精を阻害する?
男性の不適切なオナニーが「性機能障害」を引き起こす要因となっていることについて、ここでは触れる。男性の不適切なオナニーとは何か、また適切なオナニーをするにはどうすればいいのかを探っていきたい。
床オナは膣内射精障害の原因に
2018年11月に発行された一般財団法人 日本性教育協会(JASE)の月刊機関誌『現代性教育研究ジャーナル』(No.92)には、男性のマスターベーション(自慰)に関する興味深い内容が記されていた。それは同年9月、名古屋市でおこなわれた「第19回JFS性科学セミナー」(主催は日本性科学連合)で講演された獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科・リプロダクションセンター准教授・小堀善友氏の「知ってる? 膣内射精障害―大規模インターネット調査の結果を交えて―」の内容である。
男性の不妊症となり得る「性機能障害」(射精障害や勃起不全)に関するネット調査によると、20歳から77歳の男性486人の統計において、各年代で10%前後の割合で「勃起障害」が見られたという。また、各年代で半数近くが自己を早漏、もしくは早漏気味であると判断。逆に遅漏、もしくは遅漏気味と判断した男性も各年代で10~20%いたという。
小堀氏ら研究グループがおこなったマスターベーションに関する別のアンケート調査の結果も、驚くべき内容であった。これは15~64歳の男性5,279人を対象としたアンケートで、まずマスターベーションの頻度は全体で週に1~2回が最も多い(30.7%)結果。マスターベーションの方法に関しては、全体の95.4%が手を上下に動かすピストン運動で刺激する、であったのに対し、20%の男性が不適切なマスターベーション(床オナなど)を経験している。
そのうち、30代以下では、10%以上の男性が日常的に床オナをおこなっていたという。床オナなどの不適切なマスターベーションは、「膣内射精障害」の原因にもなる、と小堀氏は指摘する。遅漏な人ほど手を使ったピストン運動の際のグリップが強すぎたり、スマートフォンを用いてマスターベーションをしているなど、若年男性に多く見られるとも。「膣内射精障害」予防の見地から、不適切なマスターベーションをおこなわないよう、男性のマスターベーションを再考する必要があると小堀氏はセミナーで述べた。
この不適切なマスターベーションをおこなっている若者が多い、それが「性機能障害」(射精障害や勃起不全)につながるのだという報告内容を知ったことがきっかけとなり、個人的に私は、男性のマスターベーション(オナニー)のやり方、その考え方について強く関心を持つことができた。このことは、もっと一般に関心を広める必要があるのではないかと思ったのだ。
オナニーのやりすぎで死んじゃう?
同じ日本性教育協会(JASE)の月刊機関誌『現代性教育研究ジャーナル』の、2017年8月発行(No.77)の「Dr.上村茂仁の性の悩みクリニック」には、“オナニーのやりすぎでしょうか?”という男子高校生のマスターベーションに関する悩みが掲載されていて、いっそうこの手の問題の根の深さに気づかされた。そもそも小学校の保健の教科書では、「射精」や「精通」といった言葉以外に、「自慰」については原則、触れられていないのだ。この男子高校生の悩みはこうである。
《オナニーを毎日のようにしています。ネットなどで手に入る動画を見ながら行っているのですが、近頃はオナニー中勃起してもすぐに柔らかくなり射精してもあまり気持ちよくありません。まだ17歳なのにすごく心配です。オナニーのやりすぎでしょうか》
実は上村氏は、同記事の冒頭で、「テクノブレイク」についても触れている。「テクノブレイク」とは、オナニーのやりすぎで死ぬこと、の都市伝説。「テクノブレイク」については私も、「動画『教えて!性の神さま』―ブレイクスルーの性教育プロジェクト」の稿で触れているが、上村氏もやはりこの言説を否定している。マスターベーションをやりすぎて死ぬことはない。やりすぎて頭が悪くなる、身長が伸びない、というのもまったくの嘘。
ただし、不適切なマスターベーション(床オナなど、性器を畳やシーツにこすりつけて過度に刺激を与えたり、過激なアダルト動画を見ながらオナニーをおこなう)をおこなっていると、その刺激が強すぎることから、いざパートナーとのセックスで「勃起障害」となったり「射精障害」となり得ることは充分考えられ、これらは明らかな事実のようだ。強い刺激に慣れすぎて将来、「勃起不全」や「射精障害」を引き起こす。だから、不適切なマスターベーションはおこなわないこと。こうした理解を深めるための指導を、小学生のうちにおこなう必要があるのではないだろうか。