小中学生のカップル指南

2021年8月8日

 
 思春期にさしかかった子ども達が性に目覚め異性を好きになったりする心のときめきを、大人たちはよく知っている。自分の経験の中にあるからである。ひるがえって親の立場からそういう子ども達を垣間見れば、微笑ましいと感じる人もいるだろう。
 その頃の自分の経験を振り返れば思い出せることだが、当人の子ども達は、本当に異性を好きになり、本気で恋愛に夢中になっている。それは誰にも止められないし、止める権利もない。恋愛はたいへん素晴らしいことである。美しいものとは限らず、ぶざまで惨めったらしいものであろうがなかろうが、恋愛は、この世の中で最も賞賛すべきことであり、人生のうちの豊饒の一幕であるに違いない。
 
 ここでは子どもどうしの恋愛について考えてみたい。
 恋をしている当人の子ども――。その心中は、好きな子とキスしたいとか、抱き合いたいとか、結婚したいとか、セックスしたいとかの妄想で頭がのぼせてぐるぐると廻転しているはずである。純粋に、ただただ好きな子と一緒の時間を過ごしたいだけと思う子もいる。いずれにせよ、もう他の子が眼に入らない、勉強が手に付かないほどだ。しかし、それらの恋愛の大抵は、本物に違いないのだけれど、おおむね片思いのままの失恋で閉じられていく。あるいは自分だけの妄想の中で終わる。
 少年期の恋愛というのは、それだけで十分すぎるほど十分ではないか。苦痛を伴うが、優しい心に満ち溢れ、相手に寄り添う態度を示し、気配り心配りと神経が鋭敏になる。そうした淡い失恋譚の数々が、のちの恋愛体験の豊饒に大いに役立つことは言うまでもない。子どもどうしの恋愛とはいっても、恋愛のコツは大人とまったく変わりないはずだ。過度に追えば相手は逃げ腰になり、優しさも度を超すと下品になり、極端な場合はハラスメントとなってしまう。恋愛は理性によって制御し、付かず離れずがけっこう大事。
 
 ところが子ども達の中には、瓢箪(ひょうたん)から駒が出て、お互いの恋愛が成就してしまうケースがある。小中学生でカップル成立ということが、案外少なくないのだ。子どもどうしの恋愛で成就してしまうのはきわめて稀なケースだと思うけれど、お互いが本当に好きで好きでたまらず愛し合い、ほとんど大人顔負けの振る舞いで周囲を驚かせることが、ままある。
 小中学生で異性の友達が多かれ少なかれいること自体、とても素晴らしいことである。既に述べてきたように、中には恋人を射止めてしまう子もいる。しかしながらそもそも、小中学生における、恋人どうしの振る舞いについて、どうとらえたらよいのだろうか。いや、どうあるべきなのだろうか。恋人どうしである当人たちは、どこまで走り抜けてよいものなのだろうか
 また、実際的に恋人がいる子の親の立場として、彼らの恋愛云々にどういうアドバイスすればよいのか。あるいはすべきではないのか――。こうした事柄について、私はある懐かしい一冊の本を取り出し、いくつかの問題提起を解決してみたいと考えた。

柿本先生の『エチケット入門』

 その昔、児童書のカテゴリーにあたる小学館入門百科シリーズというのがあった。釣りだとか野球だとか、占いだとか漫画だとか、宇宙科学だとか乗り物・電車だとか、とにかく子ども達が興味のある分野の知識と教養のための本であり、私も子どもの頃、このシリーズが大好きで何冊か買って持っていたことがある。
 そのうち、“ミニレディー百科”という女の子の専科があって、ティーンの悩み事などに詳しい柿本勇先生の『エチケット入門』が、昭和51年3月に刊行されている。今ではこの本は、稀覯本となっていて入手がかなり難しい。
 幸いにして今、私の手元にそれがある。この本の中に、女の子がボーイフレンドを持ち、それが恋人となった場合の対処法について書かれている箇所があり、たいへん参考になった。これを要約して解説していきたいと思う。
 
 その前に、この本の主旨は何かについて簡単に説明しておきたい。エチケットマナーという言葉があるが、マナー(manner)というのは、ある特定の事柄の「礼儀・作法」を意味し、エチケット(etiquette)というのもほとんど同じ意味と思っていいのだが、狭義でいうと「相手に対する心配り・気配り」ととらえればいいのではないだろうか。
 『エチケット入門』の読者層は小学生や中学生くらいの子ども達を想定しているので、特に小中学生における友達間のエチケット及びマナーを指す。私がここで取り上げようとしているのは、女の子がボーイフレンド(男の子)の友達をもった時のエチケット及びマナーということになる。
 
 全般としてのエチケットの心構えとして、「3つの基本」が示されている。子ども達が知っておくべき、友達に対してのエチケットである。

◆其の一、自分の自由に生きたい気持ちを大切にしつつ、自分自身をきちんと「ととのえる」こと。
◆其の二、相手の立場に立って、自分の考えを述べたり行動すること。
◆其の三、習慣やしきたりについてしっかり知識を身につけること。

ボーイフレンドにモテる女の子のタイプ

 こんなティーンの女の子はモテません――というタイプのリストもなかなか面白くて取り上げたいところなのだが、それは割愛して、「ボーイフレンドにモテる女の子のタイプ」を紹介したい。

◎明るくてスポーツの好きな女の子
◎しんせつで思いやりのある女の子
◎すなおでむじゃきな女の子
◎ユーモアがあって、話のじょうずな女の子
◎笑顔であいさつする女の子
◎いやな仕事でも明るくひきうける女の子
◎おとなしくて清潔な感じのする女の子
◎男の子、女の子をあまり意識しない女の子
◎下級生のめんどうをよくみる女の子
◎話題が豊富で話してもあきない女の子
◎女の子の間でもにんきのある女の子

 普段はちょっと恥ずかしがり屋で無口な女の子でも、話をし始めたら以外と明るくてユーモアがあり、笑顔が可愛いという女の子が、確かに私の小学生時代のクラスメートにいたなあ――ということを、思い出した。むろんそれは、男の子の側の観点である。この場合、女の子自身が、ボーイフレンドにモテたいとした時の、どんなティーンであればいいのかということのヒントになればと思う。
 女の子に限らず男の子でも、ウジウジしていたり、あいさつができなかったり、そっぽを向いて友達に関心がなかったりする子は、異性からも同性からも好かれない心を広く持ち、いろいろなことに興味を示して行動していれば、必ず友達はできるし、異性の友達も増えていくだろう。

 すてきなボーイフレンドと交際するために

 柿本先生同性の友達だけではなく、異性の友達がたくさんいるように努力することを勧めている。同性のみならず異性の友達がいれば、物の見方や考え方、感じ方などが広がり深くなるからだということを指摘している。異性の場合は多少、同性の友達と比較して物の見方や感じ方が違う。だからこそ、先述したエチケットの心構えの「3つの基本」が大事になってくる。 
 

小学館入門百科シリーズ45/柿本勇著『エチケット入門』

第5章「すてきなB・Fと交際するために」を参考に

「こんな女の子はイヤ!!」というページも

「恋人としてのB・F」を考える

B・Fにモテる女の子のタイプとは?

クリックすると拡大します。

  これは私の経験に即したことであるが、異性の友達をもつには、より相手の趣味の範疇に抵抗なく興味を示していく寛容さが必要で、相手の趣味や気持ちや考え方を素直に受け入れる心の広さが求められる。男らしさだとか女らしさだとか、そういうことはメディアがつくりだした虚像(アイドルやモデルを売り出すための演出的手段)であるから、それを真似て自慢したりアピールするのはやめた方がいい友達をつくるのに男女の性差をとやかく持ち出すのは御法度である。
 柿本先生ボーイフレンドとのグループ交際なども勧めているが、確かに男女のグループ交際は楽しいものである。日曜日などに男女のグループでレジャーランドなどに出かけることほど、ワクワクするものはない。当然、小中学生の場合はその行動範囲は限られてくるが、欧米の高校生や大学生のように、パーティを楽しむのとは別にして男女のグループでボランティア活動をするのも、一つの手である。グループ交際をきっかけに、学校では知らなかった一面が垣間見られ、その意外性で相手を好きになることも多々ある。大いに活動した方がいい(コロナ禍ではちょっと難しいかも知れないけれど)。

恋人としてのボーイフレンド

 仲のいいボーイフレンドと恋愛が発展し、恋人となった場合のボーイフレンドとどう付き合えばよいのか。これについても柿本先生は、満遍なくポイントを示してくれている。
 小中学生であっても、恋人がいれば、その相手とデートすることは必須だなどと、彼らは当たり前のように考える。少々昔の本で古いので柿本先生は、手紙を書いたり電話をしたり…と記しているけれども、今ではそれに代わったツールとして、LINEなどのSNSで恋人と連絡を取り合うことは基本であるに違いない。恋人と映画を見たりスポーツをしたり、街を散歩したり、手をつないで腕を組んで歩いてみたいと、恋人たちはごく当たり前のように考える。
 
 ただし、小中学生においては、恋人と街に繰り出してデートに行く(=大人の恋人のように振る舞う)のは、いくら公認のカップルと言えどいきすぎだ――と述べている。
 私もこれを考えるに、なかなか具体的にどの程度とは言えないものの、例えば高校生の子がアルバイトをして稼いだお金でデート代を調達するのは筋が通っていると思えるけれど、小中学生の子が親にお小遣いをもらって街に繰り出し、日曜日のデートを楽しむ姿が健全であるとは思えないし、恋愛とはかけ離れて違和感を覚える。
 
 柿本先生は、そうした日曜日のデートなどといった大人の恋人のように振る舞うのではなく、友達としてのボーイフレンドよりやや親密な交際ぐらいを心がけて欲しい――と述べている。私もこれに同調したい。
 もう少し具体的に述べるとすれば、例えば休みの日に相手の家に遊びに行って、時折自分達のことを話し合ったり、お互いの悩み事や学校のことを相談し合ったりする――というのが、この頃の恋人としての振る舞いになるのではないだろうか。つまり、大人の恋人の真似をして楽しむのではなく、あくまで自分達の立場の中で、お互いに心を寄り添い、支え合うことができれば、小中学生にとってそれが恋人としての真の交際であり、振る舞いなのではないかと思うのである。

〈了〉