の話。
寝た子を起こせ。これは一生に関わる大事なことなんだから。

同性婚について議論する場を

2020年9月16日

 
 「同性婚(Same Sex Marriage)」を容認していく各国の迅速な社会変革に応じた要請と法整備に比べ、日本ではいまだ、その議論の場すらほとんど持たれていない――という遺憾な話。その根本には、日本の公教育における子ども達への包括的なセクシュアリティ教育が充実していない、あるいは始まったばかり、という遅れの面があるからなのだろう。「同性婚」を法的に認めていないのは、先進7カ国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、日本、カナダ、イタリア)では日本だけである。

「婚姻」の憲法解釈について

 日本において、「結婚」の通念はどうなっているのか。
 まず何より、「結婚」(けっこん)を辞書で調べてみると、こういうふうになっている。
《夫婦となること。夫婦関係を生じさせる法律行為。こんいん》

(『岩波国語辞典』第八版より引用)

《男女が、正式の夫婦関係をむすぶこと。(海外では同性婚もある)》

(三省堂『現代新国語辞典』第六版より引用)

 
 「結婚」「婚姻」という言葉に対照して、よく世間で“内縁の妻”“内縁の夫”という言葉が聞かれるけれど、この場合の「内縁」とは、どういう意味か。すなわち、事実上の夫婦関係にあるが、法的に届出をしていない夫婦のことを、私的な縁故関係=「内縁」という。当然、法律上では夫婦とは認められないが、準婚として扱われる。このことはまず先に踏まえておきたかった。
 
 さて、日本国憲法の第24条は、いわゆる“婚姻(結婚)の自由”を明記した条文である。
《婚姻は両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない》
《配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない》

(『日本国憲法』より引用)
 

 この「婚姻」に関する憲法上の補足的解釈において、小学館アーカイヴス『日本国憲法』(第二版)ではこう述べられている。
《男女が性の結合を基礎として、共同生活を継続的に営むこと。また、その関係にはいる法的行為。婚姻適齢にある男女双方の合意に加え、一定の方式による届出をすることによって成立する。結婚》

(小学館アーカイヴス『日本国憲法』第二版より引用)

 
 現行の日本国憲法第24条が、“婚姻(結婚)の自由”の下、同性の「婚姻」をも認めた解釈となり得るかどうかが、まず議論の一つとなろう。
 

「パートナー制度」と「同性婚」論義

 2020年9月9日付朝日新聞朝刊の記事「広がる『パートナー制度』 進まぬ同性婚論義」(筆者は国米あなんだ・西村奈緒美)を読み解く。
 
 「パートナーシップ制度」とは、従来の(男女の)夫婦関係を同性カップルの場合にも当てはめ、公的に認める制度のことである。始まってから5年。導入自治体は今年6月末の時点で51だという。導入自治体に住む人口は約3400万人。全人口の26.4%にあたる。この制度には法的効力はない。住宅の契約、医療機関における面会で家族として認められる。
 言うまでもなく、まだまだ導入自治体が少ない。特に東北や北陸地方は空白地域となっていて、実際問題として青森市の同性カップルのパートナーががんで入院したものの、緊急時の連絡は血縁でないとできないと病院から告げられた――という事例が記事に記されており、「パートナーシップ制度」を導入した地域との格差が生じてしまっている。
 
 ただし、法的効力のない「パートナーシップ制度」だけでは、解決できない点も多い。所得税の配偶者控除は受けられない子の共同親権は持てない育児休業や介護休業の取得が認められない、など。同性の「婚姻」を法的に認めなければ、これらの問題は解決できず、こうした同性カップル「婚姻」が法的に認められないのは、憲法違反だとする国への訴訟も各地で起きているという。
 記事の中で、金沢大学の谷口洋幸准教授(国際人権法)「日本では政府が差別を解消しなければいけないという意識が薄い」と分析し、政府・自民党の従来の夫婦観に基づいた「伝統的な家族」の形を重んじる思考が強く、2016年作成の党のパンフレットで「同性婚容認は相いれない」旨の考え方があることも記されている。国会でも「同性婚」容認云々の民法改正案の審議は進んでいないという。 

2020年9月9日付朝日新聞朝刊「広がる『パートナー制度』 進まぬ同性婚論義」

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 「同性婚」は事実上内縁の縁故関係である

 既にお気づきの通り、同性カップルによる継続的な共同生活は、事実上の「内縁の縁故関係」にあたり、少なくとも準婚としては認めなければならないのは当然である。遠藤まめた著『先生と親のためのLGBTガイド』(合同出版)の「同性カップルが法律上の不利益を回避する手段はありますか?」のページには、現状におけるその手段として、以下を挙げている。

①養子縁組制度、②任意後見制度、③公正証書、④遺言状の作成、⑤自治体が発行するパートナーシップ証明書

 
 言うなればこれらは、自分達同性カップルの、いわゆる「内縁の縁故関係」が第三者に判定される根拠となりうるものということであり、「同性婚」が法的に認められるまでのあいだは、少なからず有効な手段であろうかと思われる。ちなみに、そのページに記されている憲法24条に関わる文章には、以下の注釈が加えられている。
《憲法第24条の解釈をめぐって、「両性の合意のみ」の「両性」を男女と解釈し、憲法は同性同士の婚姻を認めていないとする主張がある。しかし、24条はもともと、親による婚姻の強制や男性の女性支配を排し、婚姻の自由、男女平等の理念を実現するためにつくられた条文であり、同性婚の禁止を定めたものではないといえる。このことは、24条2項の「個人の尊厳」、13条の「幸福追求権」、14条1項の「性別に基づく差別の禁止」などによっても支持されている》

(遠藤まめた著『先生と親のためのLGBTガイド』より引用)

 
 どうか皆さん、「同性婚」について議論していきましょう。
 

「パートナーシップ制度」に関する当サイトのページ「特定の人を好きになる―それが異性であっても同性であっても」
LGBTに関する当サイトのページ「LGBTと性の多様性から学ぶべきこと」

〈了〉