セイテキドウイってなに?
昨年は割愛してしまったけれど、ほぼ毎号紹介してきた雑誌『an・an』(マガジンハウス)の夏恒例、“SEX特集”号。今年の号(No.2311 2022.8.17-24合併号)の表紙を飾るのは、Sexy Zoneの菊池風磨さん。《ふたりの愛しい瞬間を―。愛とSEX》。
毎号、これが楽しみで“SEX特集”号を買ってしまうという女性も多いと聞く、恒例のフォトストーリーは「菊池風磨 溶け合う潜熱。」と題され、1995年生まれで今年27歳の菊地さんの、“大人の男性”の雰囲気を十二分に醸し出し、精悍で美しいボディにうっとりとさせられそうだ。
ところで、働き盛りの20代から30代の女性を対象としたアンケート調査で、「6割以上の女性がパートナーとのSEXに満足感」を得ているという結果を誌面で伝えている。
COVID-19(新型コロナウイルス)の流行で社会生活が不安定となり、個々の生活の基盤が揺らいだことを背景に、昨今ではセックスに求められているのは刺激よりも安心感を求める傾向が強いのだという。
今年の“SEX特集”号は、そうしたことに関連したテーマとして、「安心感の中のセックス」というのが挙げられるのではないだろうか。
もちろん大事なのは、性とセックスに関する基本的な正しい知識であり、「いま改めて学びたい 大人のための『性教育』」という誌面では、「生理」と「避妊」と「性感染症」についても学ぶことができる。
「安心感の中のセックス」としてもう一つ大事なのは、「性的同意」について考えることである。
「セックスで一番大事なこと。もっと知りたい、『性的同意』の話。」という誌面では、二人の専門家(産婦人科医で公衆衛生学修士の重見大介さん、SRHRアクティビストで公衆衛生学修士の福田和子さん)の対談形式による「性的同意」の話が掲載されていた。今回はこの「性的同意」についてピックアップし、考えてみたいと思う。
セイテキドウイってなに?
「性的同意」とは、片方のパートナーがセックス(あるいは何らかの性交渉)を望んだ時に、もう片方のパートナーが「セックスしてもいいよ」と自分の意思を示して同意することである。
もし、片方のパートナーが「セックスはしたくない」と意思を示したのに、強引にセックスをおこなった場合、これはセックス(性交渉)を強要したことになり、性暴力として加害が認められる可能性が高い。したがって、あくまでセックス(それ以外の性交渉も含め)は、お互いの同意の上でおこなうべきだ、という考え方が望ましい。
誌面では、「『性的同意』が成立するために必要なこと」として3つの事柄が記されていた。
①セックスすることを他人から強制されていない状況である
②相手と対等な関係である
③セックスをするたび、そして段階ごとに同意を取る
①については、とくに相手もしくはお互いがひどく酔った状態(泥酔状態)の時におこなわれた性行為は、同意の上でのセックスとは言えないので注意。
②については、自分の立場や力関係を利用して、「セックスしてくれなかったら、○○を○○するよ」などといって強引に同意を得るやり方はダメ。例えば夫であろうと妻であろうと、もともと対等な立場であり、会社の上司であろうと部下であろうと、それを性行為の時に持ち出すのは良識に反する行為だ。
③については、こまやかな同意が必要だということ。キスは「いいよ」、でも挿入は「ダメ」ということもある。性行為の一つ一つの段階で「いい?」とたずねて「いいよ」と同意を得るやり方が望ましい。これに加えて、もし相手が「(その行為は)できない、ダメ」と言った時、いちいち不満を漏らさないこと。途中でやっぱりセックスはしたくない、と気持ちが変わった時でも、愚痴をこぼさないこと。
というのが、「性的同意」の概念で大事になってくる。
セックスは思考しておこなうべきもの
セックスは人間の、いや動物の本能だから――という理屈は通用しない。これは間違った考え方である。野生動物だって、したくない時は相手に牙を剥くことがある。人間だけがセックスの強要が許されるわけはなく、理性によってセックスはコントロールされるべきだ。
福田さんは対談の中でこう述べている。
「日本で、セックスが楽しいとかセックスは幸せ、的なことを言うと、何でもかんでも許す、みたいに思われてしまうんだけど、むしろ真逆。幸せを感じるためにはまず安心できる状況であるべきで、安全なセックスって、妊娠や性感染症の不安、イヤなことや痛いことが排除されていることが大前提。お互いを尊重して初めて、いいセックスが成り立つわけで…」
つまり、お互いのハッピーのためのセックスとは何なのかということを突き詰めていくと、決してポルノムービーでやってたことを真似するためでも、単に興奮を得るためのだけの行為ではないということに気づく。
「相手が嫌がることをしない」というのは、全ての社会生活の規範として大事な概念である。これを「する」とした時、あるいはそれを飛び越えた時、あなたは暴力で相手に心身のキズを負わせる人ということになってしまう。
逆にも考えてみよう。誌面の中で福田さんは、こんなメッセージを添えていた。「NOも大事ですが、『これがしたい』を伝えるのも性的同意の一つです」。
相手を思いやることがセックスの大原則
二人(わたしとあなた)はどんな関係なのだろう?――とお互いに考えて話し合ってみる。わたしとあなた、セックスだけの関係なのかな? それとも、それ以外にももっと違う何かを求め合ってる? 求めてない?
一緒にいたい気持ちがあったり、何かの時に助け合ったり、悩みの相談に乗ったり、一緒にどこかへ行く時と楽しいとか、ずっとおしゃべりしていたいとか、そういういろいろな「好き」の関係性――。
もしそういう関係だったとしたら、立場は対等で、望まない時はセックスをしなくてもいいと、お互いに思えないだろうか。「好き」の関係性が、セックスだけに縛られるって、どこか不自然。対等じゃない気がする。わたしとあなたって、ほんとに恋人どうしなの?――といろいろ話し合ってみるべきだ。
セックスだけしか望まないパートナーは、もしかすると、「性的同意」を飛び越えたがる可能性があるから、要注意である。
思いやりのないセックスは、セックスじゃない。「好き」の関係性を築くことは難しいし、愛し合うことに至っていない可能性がある。
まずはセックスについて正しい知識を学び、より安心できる避妊の方法を知った上で、お互いについて、そしてセックスについてよく「話し合ってみる」。そう、「話し合う」ことがとても大事。酒の勢いでセックスなんていうのは一番ダメ。
今日はしたいけど、明日はしたくないかも。でもそれでいいじゃない、と思えるパートナーどうしのセックス・ライフについて、「性的同意」を軸にした、新しい自分たちの「ハッピーになれる価値観」を共有できたら、素敵だと思う。ぜひ「性的同意」をテーマに「話し合う」を実践してみよう。
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