札幌地裁の判決―同性婚という幸福の道筋をひらく
同性どうしの結婚の自由を求める全国5地裁(札幌、東京、大阪、名古屋、福岡)の訴訟のうち、3月17日の札幌地裁の判決で、同性婚を認めていない民法や戸籍法の規定について、憲法24条や13条には違反しないが、「法の下の平等」を定めた憲法14条には違反する、と初めて示した。憲法が制定された戦後当時は「同性婚」は想定しておらず、1947年の民法改正時にも婚姻は、社会通念上の異性間の精神的肉体的結合であるとし、同性どうしの婚姻は認められていないことから、国会の立法不作為については、憲法違反を直ちに認識するのは容易ではなかったとし、原告の主張は退けられ、賠償請求を棄却した。
先進7カ国で同性婚を認めていないのは日本だけ
同性どうしの結婚が認められていないのは「婚姻の自由」を保障した憲法に反するとして、同性カップル十数組が5地裁へ一斉提訴したのは、2019年のことである。今回の札幌地裁の判決で、武部知子裁判長は、「圧倒的多数派の異性愛者の理解または許容がなければ、法的効果を一部であっても受けられないのは同性愛者への保護に欠ける」とし、異性カップルと同性カップルにおいて受けられる法的利益に差異があるのは、「国会の裁量権の範囲を超え、合理的な根拠を欠いた差別にあたる」とし、憲法14条の違反を認定した。
2021年3月18日付朝日新聞朝刊一面の記事「同性婚 認めぬのは違憲」の中で、こうした札幌地裁の判決は、同性婚に関する立法や性的少数者の権利をめぐる議論に影響を与えそうだとしている。また、原告は国会に対して立法措置を促すよう控訴するという。
既に先進7カ国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、日本)のうち、日本以外の6カ国では、「同性婚」を法的に認めている。認めていないのは、日本だけである。それ以外の30の国や地域では、「同性婚」を法的に認めており、性的少数者の人権改善をめぐる議論と決定に消極的な日本の姿勢は、国として全く頼りない。加藤勝信官房長官は17日の会見で「政府としては、婚姻に関する民法の規定が憲法に反するものとは考えておりません」と話し、政権与党である自由民主党の「同性婚容認は相いれないもの」とする、旧来の家族制度を是とした著しく保守的な観念は、もはや時代にそぐわないものとなっている。
その意味でも、今度の札幌地裁の判決は、原告の請求を棄却した形とはなったものの、「婚姻の自由」と「法の下の平等」を定めた憲法の理念を合理的に貫いたものとして、画期的であった。また、これまでの国際的な知見により、同性愛は精神疾患ではないとした旨を科学的な根拠とし、逆に同性愛者による同性婚を認めない根拠がどこにあるのかという問題提起にもなっている。
尚、婚姻の憲法解釈と「婚姻の自由」を明記した憲法24条については、拙著記事「同性婚について議論する場を」を読んでいただければ幸いである。
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