の話。
寝た子を起こせ。これは一生に関わる大事なことなんだから。

男は結婚して家庭をもって一人前?

2022年11月29日

 
 人は誰しも、多かれ少なかれ、何かしら無意識の思い込みがあって生活している。
 例えば、子どもはみんなアイスクリームカレーライスが大好きだ、とか、著名な小説家はみんな万年筆で原稿を書いている、とかの思い込み。
 前者の場合、たいていの子どもはこうなのだ、という思い込みが強いと、アイスクリームが嫌いな子やカレーライスが嫌いな子に対して、おまえぜったい変じゃない? と偏見をつらねて、輪の中から排除しようとする。そういう子どもを変人扱いし、違う考えを持っている子や、違う感性や価値観を持っている子を、子どもどうしの輪の中から、あるいは大人が態度として意識的に排除したりする傾向は、見受けがちだ。
 最も厄介で根が深い無意識の思い込みとしては、男女の役割にかかわる思い込みだ。この無意識の極度な思い込みの多数派によって、社会全体が気づかぬうちに、ゆがんだ人間形成に固執してしまっているともいえる。
 またこれ自体の硬化を、社会の安定とか安静と解釈してしまうことも考えられる。いわゆる保守層の思考回路だ。
 
 無意識の思い込みに対する問題点を、どう取り図ればいいのか。実をいうと、結論を出す(思い込みをなくす)のは容易なことではないと思っている。まずはじっくりと、無意識の思い込みに対して真摯に向き合う必要がある。

内閣府の「無意識の思い込み」調査結果

 2022年11月17日付朝日新聞朝刊の「Think Gender ジェンダーを考える」では、「性別への思い込み 男性に多い傾向」という見出しの記事が掲載された(藤崎麻里筆)。
 内閣府の男女共同参画局が、インターネットを通じて全国の男女(20代から60代)の10,330人に、性別に基づく役割意識に関する「無意識の思い込み」(アンコンシャス・バイアス)の調査をおこなった。性別に基づく役割意識とは、例えば職場において、「大事な仕事は男に任せるべきだ」とか、「接客やお茶出しは女性の方が向いている」といった思い込みについてである。
 
 41の測定項目を「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」「どちらかと言えばそう思わない」「そう思わない」の4段階で訊いたところ、最も思い込みが多かった項目は男女とも、「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」で、男性48.7%、女性44.9%だった。
 測定項目の「男性は結婚して家庭をもって一人前だ」「デートや食事のお金は男性が負担するべきだ」は、若い男性ほど肯定的な回答が少なく「職場では、女性は男性のサポートにまわるべきだ」「男性は出産休暇・育児休業を取るべきではない」といった職場における役割分担では、若い男性ほど肯定的だったという。
 
 性別に基づく役割の思い込みを言われたり感じたりした経験は、女性の方が多く、女性26.5%、男性20.7%である。女性が言われたり感じたりした経験で最も多かったのは、「家事・育児は女性がするべきだ」で40.8%、逆に男性が言われたり感じたりした経験で最も多かったのは、「デートや食事のお金は男性が負担するべきだ」で29.4%だった。

「無意識の思い込み」の上位について

 性別役割に対する考えで、男女それぞれの役割意識が強い傾向にある上位3位の結果を見ていこう。
 1位は、男女とも、「女性には女性らしい感性があるものだ」で、男性51.6%、女性47.7%。“女性らしい感性”とは、いったい何を指すのか、もしかすると女性的な振る舞い(可愛らしいものが好きとか動物が好きとか、何かしらの指摘が鋭いとか?)のことを指しているのかどうか、いずれにしても漠然としていてよくわからないが、そういう女性的なものがあるだろう、あるらしい――と観念付けられていること自体、「無意識の思い込み」なのだということがいえるだろう。
 
 同じく男女とも2番目に役割意識が強い、「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」。男性50.3%、女性47.1%。これも“女性らしい感性”と似たようなもので、“男性らしい慣性”(慣性の法則)仕事に熱心な印象を与えているような思い込みといえる。また、それが家庭や家族を養う役割と強固に結びついていることにも注目したい。
 3番目は、男性の方は「デートや食事のお金は男性が負担するべきだ」の37.3%、女性の方は「女性は感情的になりやすい」の36.6%。
 男性は男性としての役割意識が、女性よりも強いようで、女性との交際における諸々の出費は、男性がおおむね負担しなければならないという「無意識の思い込み」が働いていることになる。
 
 ここから思うのは、男性は仕事をして諸々の出費の負担を強いられているのだから、それ以外のことは女性がまかなうべきだという意識(論理あるいは理屈)が生まれてはいないだろうかということである。それ以外とは、家事であり育児であり、はっきりいうと仕事以外での家庭的な運営を女性にすべて任せたいという意識があるように思える。
 「女性は感情的になりやすい」というのも、実際的には根拠に欠けた言いがかりに近いものであり、感情的に物事を対処しがちな男性も少なくない。しかし、男女とも、女性の方が感情的になりやすいと思い込んでいる人が意外に多いということなのだ。

男性性に固執しがちな男性

 2022年11月21日付朝日新聞夕刊の「『男性を生きづらい』を考える」の記事で、「『ケアが苦手』は思い込み」という見出しで大阪公立大准教授の平山亮氏の話が出ていた。
 男性性という言葉が注目を集めていて、「男性は介護や育児などのケアが苦手な生き物である」もその一つ。平山氏は、「男は仕事」というかくあるべしの考えは男性性役割(の思い込み)を指していて、男性はケアが苦手云々とは同じではないとする。
 
 それからもう一つ、忖度(そんたく)を例にとり、介護や育児のケアが男性は苦手というなら、忖度は“男社会”の政治の鑑ではないかと平山氏は皮肉る。
 いうまでもなく、忖度というのは、相手の求めていることを察して、言われなくてもその求めに応じる姿勢を指す。忖度は“男社会”の得意中の得意だが、なぜ配慮や気遣いが必要な介護や育児は男性は苦手なのかおかしいというわけである。平山氏は、それは「できない」と見せているだけであって、それがそうであるかのように見せ、結果的にケアの負担を女性に押しつけているだけに過ぎないと指摘している。

2022年11月17日付朝日新聞朝刊「性別への思い込み 男性に多い傾向」

2022年11月21日付朝日新聞夕刊「『ケアが苦手』は思い込み」

男女の無意識の思い込み

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 また平山氏は、「生きづらさ」という単語を、女性と同等に男性にも使うことに問題があるとしている。
 女性の「生きづらさ」とはすなわち、ジェンダー不均衡(ジェンダー不平等)のことであり、根っからの社会の女性差別を意味する。ところが男性も、経験の中の抑圧からの訴え「生きづらさ」という言葉で括り、それを昨今、メディアが無為に広めたおかげで、本来的な女性の「生きづらさ」ジェンダー不均衡の問題がわかりにくくなってしまったという。
 
 そうした男女間の構造的な差別の問題と、主観的な「ままならなさ」における「生きづらさ」同等に扱ってはならないとしている。これはきわめて的を射た論点である。
 男性性という言葉で括られる、男性にはこういったことが苦手な生き物であるというニュアンス(実際のところは思い込みであり言いがかり)を社会全体に生み出すことによって、女性にある方面の役割を押しつけている形になっている構造をごまかすため、男も生きづらいのだよ言い訳をしてきているというわけである。

性別役割意識の二面性

 これまでの社会が、性別ありきで物事をとらえてきたツケが、今噴出しているといえなくないか。まさにそれが性別役割意識というもので、二面性があるようだ。
 つまり、男は外で仕事をして家計を支えるべきとか、家事や育児は女性がやるべきといったような、男性が思い込んでいる事柄を女性の側に知らず知らず押しつけ女性の側がいつの間にかそれをそうするのは当然の役割と思い込む。また逆に、女性は女性らしい感性があって、感情的になりやすいと思い込んでいるから、男性は人前で泣くべきではないと思い込み、育児期間中は女性は重要な仕事を担当すべきではないと判断しがちになる。“男社会”はこうした構図の中で脈々と受け継がれていることになる。
 
 まずは何より、男の「生きづらさ」をnote.comなんかでとうとうと語る前に、悪しき思い込みの構図によって、女性が社会の仕組みから差別され、冷遇されていることに目を向けてみませんか。それがジェンダー不均衡(ジェンダー不平等)というやつです。
 食事の後片付け、生ゴミ、トイレ掃除、子どもの面倒。オクサンにだけ押しつけてませんか。それから、オモテ向きイクメンと語る男性が、オムツの取り替えだけは苦手なんで、ヨメがやってまーすw――ではダメなのですよ、男性諸君。

〈了〉

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